「保育園で食育をしたいけれど、どんな活動をすればいい?」
「食育活動がマンネリ化している」
「野菜を育てたりクッキングをしたりする以外に、何ができる?」
そんな悩みを持つ保育士の方もいるのではないでしょうか。
食育というと、野菜の栽培やクッキング、食材について学ぶ活動などを思い浮かべることがあります。
もちろん、こうした活動は子どもにとって大切な経験です。
しかし、保育園の食育は、特別な活動を行う時間だけのものではありません。
- 給食に使われている食材を見る
- 野菜に触れる
- 匂いを感じる
- 「これは何?」と保育士と一緒に考える
- 自分で食具を持って食べてみる
- 友達と一緒に「おいしいね」と話す
こうした毎日の経験も、子どもの「食べる力」を育てています。
この記事では、保育園で取り入れやすい食育活動を10個紹介するとともに、それぞれの活動で大切にしたい保育士の関わり方や援助のポイントについて考えていきます。
保育園の食育で大切にしたいこと
食育を行うとき、「子どもに何を教えるか」だけを考えてしまうことがあります。
例えば、
- 野菜の名前を覚える
- 食材について知る
- 栄養について学ぶ
といったことです。
もちろん、こうした知識も大切です。
しかし、乳幼児期の食育では、それ以上に、
「子どもが食べ物に興味を持ち、自分から関わってみようとする経験」
を大切にしたいと思います。
例えば、
- 「これは何だろう?」
- 「触ってみたい」
- 「匂いを嗅いでみたい」
- 「育ててみたい」
- 「食べてみようかな」
そんな小さな興味や意欲を、保育士が受け止めていくことも食育につながります。
そのためには、大人が正解を教えすぎないことも大切です。
「これはトマトだよ」とすぐに答えるだけではなく、
- 「何に見える?」
- 「触るとどんな感じ?」
- 「昨日より大きくなったかな?」
- 「どんな匂いがする?」
など、子ども自身が気づいたり考えたりできるような関わりを取り入れてみましょう。
食育は、保育士が知識を教えるだけの時間ではありません。
子どもが食べ物と出会い、自分なりに感じ、考え、関わっていく時間。
そのように捉えると、毎日の保育の中にもさまざまな食育が見えてきます。
保育園でできる食育アイデア10選
ここからは、日々の保育に取り入れやすい食育活動を紹介します。
特別な準備が必要な活動だけではなく、普段の保育の中で取り入れられるものも紹介しているので、園の環境や子どもの発達に合わせて取り入れてみてください。
① 野菜や植物を育てる
食育の代表的な活動の一つが、野菜や植物の栽培です。
トマト、ピーマン、ナス、キュウリ、ラディッシュ、さつまいもなど、園の環境に合わせて育てることができます。
子どもたちは、普段給食で食べている野菜が、
- 種から芽が出る
- 葉っぱが大きくなる
- 花が咲く
- 実ができる
という過程を実際に見ることができます。
「野菜は畑やスーパーにあるもの」という認識から、
「野菜にも成長する過程がある」
という気づきにつながることもあります。
保育士の関わり
大切なのは、単に「水をあげる」だけの活動にしないことです。
例えば、
- 「昨日と何が変わった?」
- 「葉っぱは何枚あるかな?」
- 「触るとどんな感じ?」
- 「どんな匂いがする?」
- 「これからどうなると思う?」
など、子どもの気づきを引き出してみましょう。
保育士がすぐに答えを教えるのではなく、子どもが観察したことや感じたことを言葉にできるようにすることも大切です。
そして、収穫した野菜を給食で食べることができれば、
「育てる→収穫する→食べる」
という経験につながります。
「自分たちで育てたものを食べる」という経験は、食材への興味を深めるきっかけにもなります。
ただし、自分たちで育てた野菜だからといって、必ず食べなければならないわけではありません。
「育てることを楽しむ」「収穫したものを見る」「匂いを嗅いでみる」など、食べること以外の経験も大切にしましょう。
② 給食に使われている食材を見てみる
特別な準備をしなくてもできる食育があります。
それが、給食に使われている食材を見ることです。
例えば、その日の給食にニンジンが入っていたら、調理前のニンジンを子どもたちに見せてみます。
「今日の給食にはニンジンが入っています」
と伝えるだけでも、子どもが食材に興味を持つきっかけになります。
さらに、
- 「どんな匂いがする?」
- 「触ると硬いね」
- 「どんな形をしている?」
- 「切ったらどうなるかな?」
など、実際の食材に触れる経験につなげることもできます。
乳児の場合は、
「見る・触る・匂いを感じる」
といった感覚的な経験を大切にします。
幼児の場合は、
「給食のどこに入っているかな?」
「どんな料理になっているかな?」
と、実際の食事につなげてもよいでしょう。
毎日の給食を活用すれば、特別な食育活動を設定しなくても、日常の中で食材への興味を育てることができます。
③ 季節の食材を知る
日本には四季があり、それぞれの季節にさまざまな食材があります。
例えば、
- 春: いちご、たけのこ、菜の花など
- 夏: トマト、とうもろこし、スイカなど
- 秋: さつまいも、きのこ、栗など
- 冬: 大根、白菜、みかんなど
こうした旬の食材を知ることも食育になります。
ただ食材の名前を覚えるだけではなく、
「夏になると、とうもろこしがたくさん採れるね」
「秋になると、さつまいもがおいしくなるね」
など、季節と食べ物のつながりを感じられるようにしてみましょう。
散歩の途中で八百屋さんやスーパーの野菜を見ることも、身近な食育になります。
「今日は何の野菜が並んでいるかな?」
「赤い野菜があるね」
など、子どもと一緒に観察してみるのもよいでしょう。
④ 野菜を洗う・ちぎるなどのお手伝いをする
年齢や園の安全管理に合わせて、食事の準備に関わる経験を取り入れることもできます。
例えば、
- 野菜を洗う
- レタスをちぎる
- とうもろこしの皮をむく
- きのこをほぐす
- 果物を観察する
などです。
ここで大切なのは、「上手にできるか」ではありません。
食事を作る過程に自分も関わった、という経験そのものを大切にすることです。
「やってみたい」という気持ちが出てきたら、その気持ちを受け止めてみましょう。
また、子どもが行ったことを大人がすぐに修正するのではなく、
「自分でやってみようとしている」
という姿にも目を向けたいところです。
もちろん、食品衛生やアレルギー、誤食、刃物などの安全面については、園のルールや職員間の共通理解に基づいて実施する必要があります。
活動内容については、年齢や発達だけでなく、子ども一人ひとりの経験や安全面も考慮して設定しましょう。
⑤ 食材の色・形・匂い・感触を楽しむ
食育は「食べること」だけではありません。
食材を五感で感じることも、大切な食経験です。
例えば、
- 「赤いね」
- 「丸いね」
- 「つるつるしているね」
- 「いい匂いがするね」
- 「触ると硬いね」
- 「こっちは柔らかいね」
など、食材の特徴に目を向けます。
同じ野菜でも、
「切る前と切った後で形が違う」
「匂いが変わった」
「硬かったものが調理すると柔らかくなった」
など、さまざまな発見があります。
特に乳児期は、食材に触れたり、見たり、匂いを感じたりする経験そのものが興味につながります。
「これは何?」という知識だけではなく、
「食べ物って面白い」
という感覚を育てていくことを意識してみましょう。
⑥ 給食を作る人と関わる
調理員や栄養士など、給食を作る人との関わりも食育になります。
例えば、
- 「今日の給食は何を作っているの?」
- 「これは何の野菜?」
- 「どうやって作ったの?」
- 「どんな匂いがする?」
など、子どもが直接話を聞く機会を作ってみましょう。
普段食べている給食が、誰かの手によって作られていることを知ることも、食への関心につながります。
また、「給食を作ってくれる人に『ありがとう』を伝えよう」という感謝の気持ちだけで終わらせず、
「どんな人が、どんな仕事をしているのか」
を知る機会にすることも大切です。
調理員や栄養士との交流を通して、子どもが給食を身近に感じるようになることもあります。
⑦ 食べ物が出てくる絵本を読む
絵本も身近な食育の一つです。
食べ物が登場する絵本を読むことで、子どもは食材や料理に興味を持つことがあります。
例えば、
- 「これ、何を食べているのかな?」
- 「おいしそうだね」
- 「○○ちゃんも好き?」
- 「どんな味がすると思う?」
など、子どもとの会話を楽しんでみましょう。
絵本を読んだからといって、実際にその食材を食べさせる必要はありません。
まずは、
「食べ物について話す・想像する・楽しむ」
という経験を大切にしましょう。
また、実際の食事に苦手意識がある子どもでも、絵本の中で食べ物に触れることで、無理なく興味を持てる場合があります。
「絵本では好きだったから、実際にも食べてみよう」と大人が急がせるのではなく、まずは興味を持つこと自体を大切にしてみましょう。
⑧ 収穫した野菜を給食につなげる
栽培活動を行う場合は、収穫して終わりにしないことも大切です。
例えば、
「今日はみんなで育てたピーマンを給食で食べるよ」
と伝えることで、栽培と食事がつながります。
自分たちが育てた野菜が給食に使われることで、
「自分たちの生活と食べ物がつながっている」
ことを感じるきっかけにもなります。
ただし、実際に食べることに抵抗がある子がいても、無理に食べさせる必要はありません。
「食べてみたい」という子がいれば挑戦できるようにし、
「今日は見ておく」
「匂いだけ嗅いでみる」
という子も、その選択を受け止めます。
食育だからといって、
「自分たちで育てたんだから食べよう」
と迫ってしまうと、食べることが負担になることがあります。
興味を持ったところから、一人ひとりのペースで関われること
を大切にしたいところです。
⑨ 「いただきます」「ごちそうさま」を考える
毎日何気なく言っている「いただきます」「ごちそうさま」も、食について考えるきっかけになります。
例えば、
「『いただきます』って何だろう?」
「誰に『ありがとう』を言っているのかな?」
と、年齢に合わせて考えてみることができます。
大切なのは、子どもに一つの答えを覚えさせることではありません。
「食事にはいろいろな人やものが関わっているんだね」
と、食事について考えるきっかけにすることです。
ただし、
「いただきますは命に感謝する言葉だから、残さず食べなさい」
といった形で、完食を求めるための口実にしてしまう必要はありません。
食事に関わる人や食材に思いを巡らせたり、感謝したりするきっかけとして扱ってみましょう。
⑩ 季節の行事と食をつなげる
日本には、食と結びついた季節の行事がたくさんあります。
例えば、
- 七夕
- お月見
- お正月
- 節分
- ひな祭り
- クリスマス
- 収穫に関する行事
などです。
行事食を実際に味わうだけではなく、
「どうしてこの食べ物を食べるのかな?」
「この季節にはどんな食べ物があるのかな?」
と、食文化に興味を持つきっかけにすることができます。
子どもたちと一緒に行事に関連する食べ物を調べたり、絵本を読んだりするのもよいでしょう。
例えば、お月見なら月や秋の収穫について話したり、ひな祭りなら行事に関連する食べ物を見たりするなど、季節の行事と食をつなげていくことができます。
食育活動は「何をするか」より「どう関わるか」が大切
ここまで10個の食育活動を紹介しました。
しかし、食育では活動そのもの以上に、
「保育士がどのように子どもと関わるか」
が大切です。
例えば、野菜を育てる活動でも、
「水をあげて」
「大きくなったね」
と大人が主導するだけではなく、
- 「昨日と何が違う?」
- 「葉っぱを触るとどう?」
- 「どんな匂いがする?」
- 「これからどうなると思う?」
と、子どもの気づきを待つことができます。
食材に触れる活動でも、
「これはニンジンだよ」
と答えを伝えるだけではなく、
- 「何だと思う?」
- 「どんな形?」
- 「触ってみる?」
- 「どんな匂いがする?」
と、子ども自身が考えたり、選択したりできるようにすることができます。
つまり、
「食育活動=保育士が教える時間」ではありません。
食育活動を、
「子どもが食べ物と出会い、自分なりに感じたり、考えたり、関わったりする時間」
として捉えることができます。
「食べさせる食育」にしないために
食育活動を行っていると、
「せっかく育てたんだから食べてほしい」
「食材に触れたから、好きになってほしい」
という大人の気持ちが出てくることがあります。
しかし、食育の目的は、子どもを「何でも食べられる子」にすることだけではありません。
例えば、
- 食べ物に興味を持つ
- 自分で選ぶ
- 苦手だと伝える
- 匂いを嗅いでみる
- 触ってみる
- 少し食べてみる
- 今日は食べない
そうした一つひとつの経験も大切です。
特に苦手な食べ物については、
「一口だけ食べてみよう」
「せっかく作ったんだから食べよう」
と無理に勧めるのではなく、
「食べる・食べない」を含めて、その子の気持ちを受け止めること
も食育の一つです。
食べることを無理強いされないという安心感があるからこそ、子どもが自分から「やってみよう」と思える場合もあります。
食育では、食べられた量だけを成果として見るのではなく、
その子が食べ物にどのように関わったのか
にも目を向けてみましょう。
年齢によって食育の方法を変えてみよう
同じ「野菜を見る」という活動でも、乳児と幼児では関わり方が変わります。
0〜1歳頃
- 見る
- 触る
- 匂いを感じる
- 保育士と一緒に楽しむ
まずは五感を使った経験を大切にします。
「これはニンジンだよ」と言葉で教えることだけではなく、実際に見たり、触れたり、匂いを感じたりする経験を積み重ねていきます。
2〜3歳頃
- 食材の名前を知る
- 色や形を比べる
- 簡単なお手伝いをする
- 「やってみたい」という気持ちを受け止める
少しずつ、自分から食材に関わる経験を増やしていきます。
「赤いね」「こっちのほうが大きいね」など、子どもの気づきを言葉にしていくことも大切です。
4〜5歳頃
- 栽培や収穫
- 簡単な調理体験
- 季節の食材を知る
- 食材が食卓に届くまでを考える
- 食文化や行事食について知る
「なぜ?」
「どうして?」
という興味を、食に関する学びにつなげていくことができます。
ただし、年齢だけで活動を決めるのではなく、子どもの発達や興味、経験、園の環境に合わせて考えることが大切です。
食育は特別な活動だけではない
「食育をしなくてはいけない」と考えると、何か特別な活動を準備しなければならないように感じるかもしれません。
しかし、食育はもっと身近なところにあります。
例えば、
- 給食に出てきた野菜について話す
- 散歩中に八百屋さんの野菜を見る
- 給食室から聞こえる音に気づく
- 絵本に出てきた食べ物について話す
- 「今日の給食は何かな?」と楽しみにする
- 食事を一緒に楽しむ
- 「お腹いっぱい」と伝える経験を大切にする
こうした毎日の経験も、子どもの食への興味につながります。
だからこそ、
食育のために特別な時間を作ることだけを考えるのではなく、日々の保育の中にある「食」の経験を大切にすること
が重要なのではないでしょうか。
保育園の食育で大切にしたいのは「食べる力」
子どもにとって、食事は毎日繰り返される生活の一部です。
だからこそ、食育も一度のイベントで終わるものではありません。
見る。
触る。
匂いを感じる。
育てる。
収穫する。
作る。
食べる。
誰かと一緒に楽しむ。
そして、
- 「食べたい」
- 「これは苦手」
- 「もうお腹いっぱい」
- 「もう少し食べたい」
- 「自分でやってみたい」
と、自分の気持ちや身体の感覚に気づく。
その一つひとつの経験が、子どもの「食べる力」につながっていきます。
保育士が大切にしたいのは、子どもを「正しく食べられるようにする」ことだけではありません。
子どもが食べ物に興味を持ち、自分から関わり、食べることを楽しめる環境をつくること。
それも、保育における大切な食育です。
今回紹介した10の活動も、そのまま実施する必要はありません。
園の環境や子どもの発達、興味に合わせて、できるところから取り入れてみてください。
そして、食育活動を行ったときには、
「何を経験させたか」
だけではなく、
「子どもは何を感じ、何に興味を持ち、どんな姿を見せていたか」
にも目を向けてみてください。
そこから、次の保育につながる食育が見えてくるかもしれません。
食育について、さらに知りたい方へ
食育は、特別な活動だけでなく、毎日の食事援助とも深く関わっています。
乳児期の食事介助や、スプーン・フォーク・箸・コップへの移行、偏食への関わりなどについても、別の記事で詳しく解説しています。
子どもが「食べるって楽しい!」を感じる食育・食事のアプローチ
保育園の食事を「完食させること」だけで考えず、子どもの主体性や食べる意欲を大切にした食事援助について解説しています。
→ 子どもが「食べるって楽しい!」を感じる食育・食事のアプローチ
授乳から食事介助まで|子どもの「食べる力」を育む丁寧な関わり
乳児期の授乳や離乳食、食事介助について、子どもの発達と安全な援助という視点から解説しています。
→ 授乳から食事介助まで|子どもの「食べる力」を育む丁寧な関わり
スプーン・フォーク・箸・コップへの移行|「正しく使わせる」より大切な保育士の関わり
幼児期の食具の移行や食事姿勢について、子どもの発達や「やってみたい」という気持ちを大切にした援助について解説しています。
→ スプーン・フォーク・箸・コップへの移行|「正しく使わせる」より大切な保育士の関わり
食育を「何を食べさせるか」だけで考えない
食育というと、野菜を食べることや栄養について学ぶことを思い浮かべるかもしれません。
しかし、乳幼児期の食育には、
食べ物に興味を持つこと。
自分から関わってみること。
食べたい、食べたくないという気持ちを表現すること。
誰かと一緒に食事を楽しむこと。
そうした一つひとつの経験も含まれています。
だからこそ、保育士が子どもの姿を丁寧に見ながら、
「この子は今、何に興味を持っているのだろう?」
「どうしたら安心して食べ物に関われるだろう?」
「この子が自分からやってみようと思える環境はどうしたらつくれるだろう?」
と考えることが大切なのではないでしょうか。
毎日の食事や遊び、生活の中にある小さな「食」の経験を大切にすること。
それも、保育園でできる大切な食育です。


コメント