子どもにとって、食事は栄養を摂るだけの時間ではありません。
「おいしい」
「もっと食べたい」
「これ、なんだろう?」
「自分でやってみたい」
「今日はこれにしてみよう」
そんな一つひとつの経験を通して、子どもは食べることを知っていきます。
だからこそ、保育園における食育は、単に栄養バランスの良い給食を提供することだけではありません。
子どもが食べることを楽しみ、自分の身体や気持ちを大切にしながら、「食べる力」を育んでいくこと。
それも、保育における大切な食育だと考えています。
このページでは、乳児期から幼児期までの食事介助や食具の移行、偏食への関わり、食事環境、食育の考え方などについて、保育士の皆さんに向けてまとめています。
食育で大切にしたいこと
食育というと、
「食材について学ぶ」
「野菜を育てる」
「クッキングをする」
「栄養について知る」
といった活動を思い浮かべることも多いと思います。
もちろん、こうした経験も大切です。
でも、毎日の保育の中には、もっと身近な「食育」があります。
例えば、
子どもが自分で食べようとすること。
手づかみで食べること。
スプーンを持ってみること。
苦手な食べ物を前にして、自分なりに考えること。
「もういらない」と伝えること。
友達と一緒に食卓を囲むこと。
「おいしいね」と誰かと気持ちを共有すること。
こうした毎日の積み重ねそのものが、子どもの「食べる力」を育てています。
だからこそ、
食べさせることだけではなく、子どもがどのように食べているのかを見る。
そして、
食べることを子ども自身の経験として保障する。
そんな視点を大切にしたいと考えています。
「食べるって楽しい」を育む保育
食事の時間に、
「全部食べようね」
「あと一口だけ頑張ろう」
「これを食べたらデザートね」
「好き嫌いしないで食べよう」
と声をかけることがあります。
もちろん、子どもの健康を願っての関わりです。
しかし、大人にとっては「ちょっとした声かけ」でも、子どもにとっては食事へのプレッシャーになることがあります。
例えば、極端な話です。
もし自分が苦手な食べ物を、上司から、
「おいしいから食べてみなよ」
「一口だけでいいから」
「みんな食べているよ」
と何度も勧められたら、どうでしょうか。
まして、自分にとって強い嫌悪感のあるものだったら。
どれだけ「おいしいよ」と説明されても、頭の中では「絶対に食べたくない」と感じているかもしれません。
それを無理に口に入れるよう求められたら、
それは「食育」ではなく、苦痛になってしまいます。
子どもも同じです。
味覚や嗅覚、食感などの感じ方には個人差があります。
「食べられない」ことには、その子なりの理由があるかもしれません。
だからこそ、食事の場面では、
食べさせることよりも、食べることへの安心感や意欲を守ること。
これを大切にしたいと思います。
食育・食事援助の記事
ここからは、日々の保育に取り入れやすいテーマごとに、食育について解説しています。
① 【保育の質向上】子どもが「食べるって楽しい!」を感じる食育・食事のアプローチ
保育園の食事は、単なる栄養補給ではありません。
子どもの主体性や自己調整、感覚、社会性など、さまざまな発達につながる大切な生活の場です。
「完食させること」を目標にするのではなく、
子どもが「食べたい」と思える環境をどうつくるか。
偏食や苦手な食べ物をどう捉えるか。
「一口だけ食べてみよう」という関わりをどう考えるか。
毎日の食事援助を見直したい保育士の方に読んでいただきたい記事です。
→ 子どもが「食べるって楽しい!」を感じる食育・食事のアプローチ
② 【乳児期の食育】授乳から食事介助まで|子どもの「食べる力」を育む丁寧な関わり
乳児期の食事は、幼児期とは違った専門的な援助が必要です。
授乳の姿勢。
口の機能。
離乳食の食べさせ方。
スプーンの入れ方。
一口の量。
飲み込んだことを確認してから次の一口を待つこと。
そして、手づかみ食べ。
乳児期の食事介助は、単に「食べさせる技術」ではありません。
子どもの発達を理解しながら、
安全に食べることを支え、自分で食べる力につなげていくこと
が大切です。
乳児保育に関わる保育士の方に、ぜひ知っておいてほしい食事介助の基本をまとめています。
→ 授乳から食事介助まで!子どもの「食べる力」を育む丁寧な関わり
③ 【幼児期の食育】スプーン・フォーク・箸・コップへの移行|「正しく使わせる」より大切な保育士の関わり
幼児期になると、
「そろそろ箸を使えるようにしたい」
「きれいな姿勢で食べてほしい」
「スプーンではなくフォークを使ってほしい」
など、大人の期待が増えていきます。
しかし、食具の移行は年齢だけで決めるものではありません。
手指の発達。
手首の動き。
体幹の安定。
目と手の協調。
そして何より、
「使ってみたい」という子ども自身の意欲。
こうしたものを見ながら進めていくことが大切です。
「箸を使えるようになったらスプーンには戻らない」のではなく、
「疲れたらいつでもスプーンに戻っていい」
という安心感があるからこそ、新しいことに挑戦できます。
食具の移行を「できる・できない」だけで考えず、子どもの発達と主体性から考えたい方におすすめの記事です。
食育は「給食の時間」だけではありません
食育というと、給食の時間や食育活動だけを思い浮かべるかもしれません。
しかし、子どもが食べる力を育てていくためには、生活全体を見ることが大切です。
十分に身体を動かして遊ぶ。
しっかり眠る。
お腹が空く。
友達と一緒に食べる。
食材に触れる。
栽培をする。
調理する人と関わる。
食事を楽しむ。
こうした経験がつながって、「食べる力」が育っていきます。
そして、保育士にできることは、子どもに「正しく食べさせる」ことだけではありません。
子どもが自分の身体や気持ちに気づき、
「食べたい」
「やってみたい」
「これは苦手」
「もうお腹いっぱい」
と、自分なりに感じたり、考えたり、表現したりできる環境をつくることです。
食育を「保育の質」から考える
食事の場面は、子どもの発達がとてもよく見える場面です。
手指の発達。
口腔機能。
姿勢。
感覚。
言葉。
友達との関係。
自己調整。
主体性。
そして、保育者との信頼関係。
だからこそ、食事介助を単なる「給食を食べさせる仕事」と捉えるのではなく、
として考えていきたいと思います。
「早く食べて」
「全部食べよう」
「ちゃんと座って」
と大人が子どもを動かすのではなく、
「どうしたらこの子が安心して食べられるだろう?」
「今、この子は何を感じているのだろう?」
「どこまで自分でできるのだろう?」
と考えてみる。
その視点が、毎日の食事援助を変えていくのではないでしょうか。
こんな保育士の方に読んでほしい
- 食事介助に自信がない
- 離乳食の援助方法を改めて確認したい
- 食具の移行を年齢だけで考えてしまっている
- 箸を使わせるタイミングに悩んでいる
- 偏食への関わり方を見直したい
- 「一口だけ食べてみよう」と言ってしまう
- 食事中の姿勢をどう援助すればよいか分からない
- 子どもの「食べる意欲」を大切にしたい
- 食育を保育の質という視点から考えてみたい
一つでも当てはまる方は、ぜひそれぞれの記事も読んでみてください。
食育で大切なのは、「食べさせること」ではなく「食べる力を育てること」
子どもにとって、食事は毎日の生活の中にあります。
だからこそ、食育は特別な活動だけで完結するものではありません。
毎日の一口。
スプーンを持つ瞬間。
手づかみで食べる経験。
コップを自分で持つ経験。
箸に挑戦する経験。
「もういらない」と伝える経験。
友達と「おいしいね」と笑い合う時間。
その一つひとつが、子どもの「食べる力」につながっています。
保育士ができることは、子どもを大人の「正しい食べ方」に近づけることだけではありません。
子どもが安心して食べ、自分で感じ、自分で選び、自分のペースで食べる経験を保障すること。
その積み重ねが、
「食べるって楽しい」
という気持ちにつながっていくのだと思います。
これからも、日々の保育に生かせる食育や食事援助について、保育士の皆さんと一緒に考えていきます。