環境を通して行う保育とは?保育士向けにわかりやすく解説|保育所保育指針の基本理念

ブログ
この記事は約12分で読めます。

「環境を通して行う保育」という言葉を聞いたことはあっても、実際にはどのような保育なのか説明できますか。

保育所保育指針には「保育は環境を通して行うもの」と明記されています。しかし、実際の現場では「環境=玩具を増やすこと」「部屋をきれいに整えること」と考えられてしまうことも少なくありません。

私は園長として、監査や保育巡回、園内研修などを数多く経験してきました。その中で感じるのは、「環境」という言葉の捉え方が、人によって大きく違うということです。

この記事では、保育士の方や保護者の方にも分かりやすく、

・環境を通して行う保育とは何か
・保育所保育指針で大切にされている理由
・保育現場で実践するための考え方
・監査と保育巡回で感じる環境の矛盾

まで、現役園長の視点から詳しく解説します。

この記事を読むことで、「環境」という言葉の本当の意味が理解でき、日々の保育を見る視点が大きく変わるはずです。


  1. 環境を通して行う保育とは?
  2. 「教える保育」ではなく「育つ環境をつくる保育」
  3. 保育者は「教える人」ではなく「環境をデザインする人」
  4. 現場でいう「環境」とは何か?5つの環境から考える保育
  5. ① 人的環境|保育者も友達も「環境」である
  6. ② 物的環境|玩具や家具は「遊びを生み出す道具」
  7. ③ 自然環境|四季は最高の教材になる
  8. ④ 時間の環境|子どもには「待つ時間」も必要
  9. ⑤ 空間の環境|子どもが安心して挑戦できる場所をつくる
  10. 年齢によって環境の作り方も変わる
  11. 監査では「図面どおり」、巡回指導では「子ども主体」。現場で感じる環境づくりの難しさ
  12. 一般指導検査では、安全性や基準が重視される
  13. 保育巡回では「子どもが育つ環境」が見られる
  14. 現場では、その両方を考えなければならない
  15. 園長として職員に伝え続けてきたこと
  16. 良い保育環境とは「正解」があるものではない
  17. 良い保育環境は「子どもの姿」が教えてくれる
  18. 子どもの姿こそ、保育環境の答え
  19. 保育者は「教える人」ではなく「育ちを支える人」
  20. 園長として一番伝えたいこと
  21. 保護者の方へ伝えたいこと
  22. まとめ
  23. 内部リンク5領域とは?保育士向けにわかりやすく解説|遊びとのつながりや10の姿との違いも解説 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~3つの資質・能力とは?保育士向けにわかりやすく解説|5領域・10の姿とのつながりも紹介 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~自己肯定感を育てる保育士の関わり方|園長経験から伝えたい子どもの心を育てる保育とは | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~SIDSチェックで監査員が本当に見ているポイント|書類よりも重視される「現場の当たり前」 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~指導監査で重視されるのは書類ではない|現場運用で見られる本質 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~

環境を通して行う保育とは?

保育所保育指針では、

「保育は、環境を通して行うものである」

と示されています。

つまり、保育者が一方的に教えるのではなく、子どもが環境との関わりを通して自ら育っていくことを大切にしているという考え方です。

ここでいう環境とは、決して部屋や玩具だけを指しているわけではありません。

例えば、

・保育室
・園庭
・自然
・玩具
・絵本
・友達
・保育者
・地域
・季節
・行事

これらすべてが子どもの育ちに影響を与える「環境」です。

つまり、保育者自身も子どもにとって最も重要な環境の一つなのです。


「教える保育」ではなく「育つ環境をつくる保育」

小学校では知識を教える場面が多くあります。

一方、保育園や幼稚園では、「教えること」よりも「子どもが育つ環境を整えること」が重視されます。

例えば、

「今日は虫探しをします。」

と指示するよりも、

虫が集まりそうな草むらへ行き、

「何かいるかな?」

と子ども自身が興味を持てる環境をつくる方が、主体性や探究心は大きく育ちます。

つまり、

子どもを動かす保育ではなく、

子どもが自然と動きたくなる環境をつくること。

これが環境を通して行う保育の本質です。


保育者は「教える人」ではなく「環境をデザインする人」

園長として新人保育士の保育を見ていると、「教えよう」とする先生ほど、子どもが受け身になってしまう場面を多く見てきました。

例えば積み木遊びでも、

「こうやって積むんだよ。」

「もっと高く積んでごらん。」

と答えを教えてしまえば、子どもはその通りに積むだけになります。

しかし、

「どうしたら倒れないかな?」

「もっと高くするにはどうしたらいいと思う?」

と問い掛けるだけで、子どもは自分で考え始めます。

保育者が変わったのではありません。

環境が変わったのです。

子どもは教えられることで育つのではなく、自分で考える経験を積み重ねることで育っていきます。

だからこそ保育者は、「何を教えるか」ではなく、「どんな経験が生まれる環境をつくるか」を考えることが重要なのです。

現場でいう「環境」とは何か?5つの環境から考える保育

「環境を通して行う保育」と聞くと、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、保育室のレイアウトや玩具ではないでしょうか。

もちろん、それらも大切な環境です。

しかし、子どもの育ちは、それだけで決まるものではありません。

保育現場では、子どもを取り巻くすべてが環境になります。

だからこそ、保育者は「何を教えるか」だけではなく、「どんな環境を用意するか」を考え続ける必要があります。

ここでは、保育の現場で大切にしたい5つの環境について見ていきましょう。


① 人的環境|保育者も友達も「環境」である

子どもにとって最も影響が大きい環境は「人」です。

保育者の表情や声のトーン、言葉掛け、距離感。

友達との関わり。

これらすべてが子どもの安心感や挑戦する気持ちを育てています。

例えば、子どもが積み木を高く積もうとしている場面。

倒れた瞬間に、

「だから言ったでしょう。」

と言われれば、子どもは挑戦することが怖くなります。

一方で、

「惜しかったね。もう一回やってみる?」

と笑顔で寄り添われると、子どもはもう一度挑戦してみようと思えます。

積み木は同じでも、環境はまったく違うのです。

私は園内研修でもよく職員へ伝えています。

「保育者自身が、子どもにとって一番大きな環境ですよ。」

子どもは保育者の言葉以上に、表情や空気感を敏感に感じ取っています。


② 物的環境|玩具や家具は「遊びを生み出す道具」

環境構成というと、まず思い浮かぶのが玩具や家具でしょう。

しかし、重要なのは「何を置くか」ではありません。

「どう遊びたくなるか」です。

例えば、

積み木を棚の奥にしまっている園と、

子どもが自由に取り出せる高さに置いてある園。

同じ積み木でも、遊びの量も質も大きく変わります。

製作コーナーも同様です。

クレヨンや紙を保育者が管理している環境では、

「使っていい?」

という確認から始まります。

一方、自分で選び、必要な物を取り出せる環境では、

「こんなの作りたい。」

という主体的な活動が自然に始まります。

環境構成とは、子どもの行動を制限することではなく、「やってみたい」を引き出す仕掛けづくりなのです。


③ 自然環境|四季は最高の教材になる

保育室だけが保育ではありません。

散歩や戸外活動も、大切な環境です。

春には花が咲き、

夏には虫が現れ、

秋には落ち葉や木の実が増え、

冬には霜や氷に触れることができます。

こうした経験は、図鑑や映像だけでは決して得られません。

例えば、散歩中に子どもがダンゴムシを見つけたとします。

保育者が、

「早く行こう。」

と促せば、その経験は終わります。

しかし、

「どうして丸くなったんだろう?」

「どこへ行くのかな?」

と一緒に立ち止まることで、その時間は探究活動へ変わります。

自然は、子どもの「なぜ?」を育てる最高の教材です。


④ 時間の環境|子どもには「待つ時間」も必要

意外と見落とされがちなのが、時間も環境であるという考え方です。

保育現場では、

「早くして。」

「あと5分だよ。」

という言葉が飛び交うことがあります。

もちろん生活には時間の区切りも必要です。

しかし、子どもが夢中になっている遊びを大人の都合だけで終わらせてしまうと、主体性や集中力が育つ機会を失ってしまいます。

私は園長として保育を見ていると、

「この先生は待てる先生だな。」

と思う場面があります。

子どもが考えている時間を奪わず、

答えを急がず、

最後まで見守っている先生です。

そのクラスの子どもたちは、自分で考える姿が本当に多く見られます。

待つことも、大切な環境づくりなのです。


⑤ 空間の環境|子どもが安心して挑戦できる場所をつくる

保育室の広さや家具の配置だけが空間ではありません。

子どもが「ここなら安心して遊べる」と感じられる場所をつくることが重要です。

例えば、

・静かに絵本を読みたい子
・友達とごっこ遊びをしたい子
・一人でじっくり製作したい子

それぞれが安心して過ごせる場所があることで、子どもは自分らしく活動できます。

保育室全体を一斉活動だけの空間にしてしまうと、子どもの主体性は育ちにくくなります。

子ども一人一人の過ごし方を想像しながら空間を整えることも、環境を通して行う保育の大切な考え方です。


年齢によって環境の作り方も変わる

環境は、どの年齢でも同じではありません。

0歳児には安心して人と関われる環境が必要です。

1・2歳児では、「自分でやってみたい」と思える環境が重要になります。

3歳児では友達との関わりが増え、4・5歳児になると、自分たちで遊びを発展させられる環境が求められます。

つまり、環境とは「整っていること」が目的ではありません。

その年齢、その子どもたちの発達に合っていることが何よりも大切なのです。

だからこそ保育者は、「この環境で子どもはどのような経験を積めるだろう」という視点を持ち続ける必要があります。

監査では「図面どおり」、巡回指導では「子ども主体」。現場で感じる環境づくりの難しさ

ここからは、私が園長として実際に感じてきたことをお伝えしたいと思います。

保育環境について学ぶと、多くの保育士が理想と現実のギャップに悩みます。

その理由の一つが、「監査」と「保育巡回」で求められる視点の違いです。

私はこれまで一般指導検査や巡回指導を何度も受けてきました。

その中で、「どちらも子どものため」という目的は同じでありながら、現場では難しさを感じる場面が少なくありませんでした。


一般指導検査では、安全性や基準が重視される

一般指導検査では、まず確認されるのは法令や基準が守られているかという視点です。

例えば、

・家具の配置は適切か
・避難経路は確保されているか
・危険物はないか
・保育室が認可基準どおりになっているか

といった、安全面や施設基準について確認されます。

これは子どもの命を守るために欠かせない視点です。

事故が起きてからでは遅いため、一定のルールが必要なのは当然のことです。


保育巡回では「子どもが育つ環境」が見られる

一方、保育巡回では見られる視点が変わります。

巡回の先生方は、

「この環境で子どもは主体的に遊べていますか。」

「子どもが自分で選択できる環境になっていますか。」

「保育者が指示しすぎていませんか。」

という視点で保育を見ています。

つまり、安全性ではなく、「育ち」を見ているのです。

例えば、おもちゃが棚にきれいに並んでいても、

子どもが自由に手に取れなければ主体性は育ちません。

製作の材料がたくさんあっても、

毎回保育者の許可が必要なら、自分で考えて行動する経験は少なくなります。

巡回では、そうした子どもの姿を通して環境を評価しています。


現場では、その両方を考えなければならない

ここが保育の難しいところです。

安全だけを優先すれば、子どもの挑戦は減ります。

逆に自由だけを優先すれば、事故のリスクは高まります。

つまり保育者は、

「安全」と「主体性」

この二つを常にバランスよく考えなければなりません。

例えば、はさみを使う活動。

危ないからと保育者がすべて管理してしまえば、安全ではあります。

しかし、それでは子どもは「使い方」を学ぶ機会を失ってしまいます。

だからこそ、

危険をゼロにするのではなく、

安全に挑戦できる環境を整えることが保育者の役割なのです。


園長として職員に伝え続けてきたこと

私は職員へよくこんな話をしていました。

「環境は、一度作ったら終わりではありません。」

子どもの姿は毎日変わります。

興味も変わります。

遊びも変わります。

だから環境も変わり続ける必要があります。

昨日まで夢中だった遊びが、今日は誰も遊ばないこともあります。

そんなときは、

「子どもが悪い。」

ではなく、

「環境を見直すタイミングかもしれない。」

と考えてほしいのです。

子どもの姿は、環境からのメッセージです。

遊びが広がらない。

友達同士のトラブルが続く。

落ち着かない子が増えた。

そんな姿が見えたら、まず見直すべきなのは子どもではなく、環境なのかもしれません。


良い保育環境とは「正解」があるものではない

「この配置なら正解」

「この玩具があれば正解」

そんな環境づくりは存在しません。

大切なのは、その環境が今の子どもたちに合っているかどうかです。

保育所保育指針にもあるように、保育は子どもの発達や興味、生活を踏まえて柔軟に行われるものです。

つまり、良い環境とは完成されたものではなく、子どもの姿に合わせて変化し続ける環境なのです。

私自身、園長として何年経験を積んでも、「これで完成だ」と思えたことは一度もありません。

子どもが変われば環境も変わる。

だからこそ保育は難しく、そして面白い仕事なのだと思います。

良い保育環境は「子どもの姿」が教えてくれる

ここまで、「環境を通して行う保育」についてお伝えしてきました。

保育環境とは、保育室をきれいに整えることでも、おもちゃを増やすことでもありません。

子どもが安心して挑戦し、自分で考え、人と関わりながら成長できる環境をつくることです。

では、その環境が本当に子どもに合っているかどうかは、どのように判断すればよいのでしょうか。

答えは、とてもシンプルです。

「子どもの姿」を見ることです。


子どもの姿こそ、保育環境の答え

保育者はつい、

「この環境で大丈夫かな。」
「もっとおもちゃを増やそう。」
「レイアウトを変えた方がいいかな。」

と考えてしまいます。

もちろん、それも大切です。

しかし、本当に見るべきなのは環境ではなく、その環境の中で過ごしている子どもたちです。

例えば、

子どもが夢中になって遊んでいる。

友達同士で相談しながら遊びが発展している。

何度失敗しても挑戦を続けている。

そんな姿が見られるなら、その環境は子どもの育ちを支えていると言えるでしょう。

反対に、

同じ遊びしかしない。

すぐに飽きてしまう。

保育者の指示を待つ姿が多い。

トラブルが繰り返される。

このような姿が続くのであれば、子どもを変えようとする前に、環境を見直す視点が必要なのかもしれません。

保育環境は、子どもの姿を映し出す鏡なのです。


保育者は「教える人」ではなく「育ちを支える人」

保育士になったばかりの頃は、

「どう教えたら伝わるだろう。」

と考えることが多いかもしれません。

しかし経験を重ねるほど、その考え方は少しずつ変わっていきます。

「どう教えるか」ではなく、

「どうすれば子どもが自分で気付けるだろう。」

「どんな環境なら挑戦したくなるだろう。」

そんな視点で保育を考えるようになります。

実際、子どもは大人が思っている以上に、自ら学ぶ力を持っています。

その力を信じ、必要以上に先回りせず、安心して挑戦できる環境を整えること。

それが保育者の専門性であり、保育の大きな役割です。


園長として一番伝えたいこと

私は園長として、多くの保育を見てきました。

その中で「保育が上手な先生」に共通していたことがあります。

それは、特別な技術を持っていることではありません。

子どもをよく見ていることです。

遊びの変化に気付き、

小さな成長を見逃さず、

「今、この子には何が必要だろう。」

と考え続けています。

だから環境も、子どもの姿に合わせて少しずつ変えていきます。

保育は、一度環境を整えれば完成する仕事ではありません。

子どもの成長に合わせて環境も成長し続ける仕事なのです。


保護者の方へ伝えたいこと

この記事を読んでくださっている保護者の方にも、ぜひ知っていただきたいことがあります。

保育園では、子どもたちは「ただ遊んでいる」のではありません。

遊びを通して、

考える力を育て、

友達と関わる力を育て、

言葉を育て、

表現する力を育て、

失敗から学ぶ力を育てています。

一見すると自由に遊んでいるように見える時間も、保育士は子どもの姿を見ながら環境を整え、一人一人の育ちを支えています。

遊びは、幼児期にとって最も大切な学びです。

その積み重ねが、小学校での学びだけでなく、大人になってからも必要となる「生きる力」の土台になっていきます。


まとめ

保育所保育指針が示す「環境を通して行う保育」とは、子どもが環境との関わりを通して主体的に学び、成長していくことを大切にする考え方です。

環境とは、保育室や玩具だけではありません。

保育者、友達、自然、時間、空間など、子どもを取り巻くすべてが環境です。

そして、良い保育環境に「正解」はありません。

大切なのは、「今、この子どもたちにとって最適な環境か」という視点を持ち続けることです。

子どもの姿を丁寧に見つめ、環境を整え、必要に応じて見直していく。

その積み重ねこそが、子どもの主体性や非認知能力、そして「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」へとつながっていきます。

保育とは、子どもに何かを教え込む仕事ではありません。

子どもが自ら育とうとする力を信じ、その力が十分に発揮できる環境をつくる仕事です。

それこそが、保育という仕事の奥深さであり、私たち保育者にしかできない大切な専門性なのだと、私は園長として強く感じています。

内部リンク5領域とは?保育士向けにわかりやすく解説|遊びとのつながりや10の姿との違いも解説 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~3つの資質・能力とは?保育士向けにわかりやすく解説|5領域・10の姿とのつながりも紹介 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~自己肯定感を育てる保育士の関わり方|園長経験から伝えたい子どもの心を育てる保育とは | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~SIDSチェックで監査員が本当に見ているポイント|書類よりも重視される「現場の当たり前」 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~指導監査で重視されるのは書類ではない|現場運用で見られる本質 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~

コメント

タイトルとURLをコピーしました