環境を通して行う保育とは?保育士向けにわかりやすく解説|保育所保育指針の基本理念

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「環境を通して行う保育」という言葉を聞いたことはあっても、

「具体的にはどんな保育?」

と聞かれると、説明するのが難しいと感じる方もいるのではないでしょうか。

保育における環境というと、

玩具を増やす。

保育室のレイアウトを変える。

コーナーをつくる。

といった「物や空間」を思い浮かべることがあります。

もちろん、これらも大切な環境です。

しかし、保育における環境はそれだけではありません。

保育者。

友達。

自然。

時間。

生活の流れ。

地域。

そして、その中で生まれる人との関係。

子どもを取り巻くさまざまなものが、育ちに影響しています。

私は園長として保育を見るだけでなく、保育巡回や園内研修、指導検査への対応など、さまざまな立場から保育環境を見てきました。

その中で感じるのは、

「良い環境とは、きれいに整っている環境ではなく、子どもの姿に合っている環境である」

ということです。

この記事では、「環境を通して行う保育」とは何か、保育現場ではどのように考えればよいのかを、具体例を交えながら解説します。

この記事でわかること

・「環境を通して行う保育」の基本的な考え方
・保育における「環境」とは何を指すのか
・子どもの主体性と環境構成の関係
・保育者が環境を見るときのポイント
・安全と子どもの主体性を両立する考え方
・園長や主任が保育環境を見るときの視点

環境を通して行う保育とは?

保育所保育指針では、保育は環境を通して行うことを基本としています。

これは、保育者が子どもに知識や行動を一方的に教えるだけではなく、

子ども自身が周囲の環境に関わる。

興味を持つ。

試してみる。

人と関わる。

自分なりに考える。

そうした経験を通して育っていくことを大切にする考え方です。

例えば、公園へ行ったとします。

保育者が、

「今日は虫を探しましょう」

と活動を決めることもできます。

一方で、草むらで子どもが何かを見つけ、

「先生、虫がいる!」

と興味を持ったところから遊びが始まることもあります。

「どこへ行くのかな」

「同じ虫がほかにもいるかな」

「何を食べるんだろう」

と、子どもの疑問が広がっていく。

そこへ保育者が図鑑を用意したり、一緒に観察したりすることで、さらに経験が深まっていきます。

このように、

「子どもに何をさせるか」

だけを考えるのではなく、

「子どもが自分から関わりたくなる環境をどうつくるか」

を考えることが、環境を通して行う保育の大切な部分です。

保育における「環境」は玩具や保育室だけではない

環境という言葉から、保育室のレイアウトや玩具を想像する方は多いと思います。

しかし、子どもを取り巻く環境はもっと幅広いものです。

保育では、例えば次のような環境があります。

① 人的環境

保育者や友達など、子どもの周りにいる人と、その人との関係です。

保育者の表情。

声の掛け方。

距離の取り方。

子どもの話を待つ時間。

困ったときに助けてもらえる安心感。

こうしたことも、子どもの行動に大きく影響します。

例えば積み木が崩れたとき。

「だから言ったでしょう」

と言われるのか。

「崩れちゃったね。どうする?」

と一緒に考えてもらえるのか。

積み木そのものは同じでも、子どもが経験することは変わります。

保育者自身も、子どもにとって大切な環境の一つです。

人的環境については、「保育における人的環境とは?|具体例でわかる保育者の役割と子ども主体の環境づくり」で詳しく紹介しています。

② 物的環境

玩具、絵本、家具、素材、遊具など、子どもの周りにある物です。

ただし、大切なのは、

「何を置いているか」

だけではありません。

子どもから見えるか。

自分で手に取れるか。

自分で戻せるか。

遊びが広がる量や種類になっているか。

という視点も必要です。

例えば、積み木がたくさんあっても、保育者に言わなければ使えない場所に置いてあれば、子どもが自分で遊びを始めることは難しくなります。

反対に、自分で見つけ、選び、取り出せる環境であれば、

「これを使ってみよう」

という行動につながりやすくなります。

③ 自然環境

園庭や公園、散歩先の自然も、大切な保育環境です。

花。

虫。

木の実。

落ち葉。

風。

雨。

霜。

氷。

季節によって環境は変化します。

子どもは自然の中で、

「なんで?」

「これ何?」

「昨日と違う」

とたくさんの発見をします。

保育者がすぐに答えを伝えるだけではなく、

「本当だね」

「どうしてだろう」

「明日も見てみようか」

と一緒に考えることで、一つの発見がさらに広がることがあります。

④ 時間の環境

時間も子どもにとっての環境です。

十分に遊び込める時間があるか。

考える時間があるか。

活動の切り替えを突然求められていないか。

子ども自身が生活の見通しを持てているか。

こうしたことも保育に影響します。

もちろん、保育園は集団生活なので、

給食。

午睡。

散歩。

降園。

など、一定の時間の流れは必要です。

それでも、

「あと5分だけ続けられないか」

「作ったものを残して明日続きをできないか」

「全員同時に終わる必要があるのか」

と考えることはできます。

時間をどう使うかも、環境構成の一つです。

⑤ 空間の環境

同じ保育室でも、空間の使い方によって子どもの過ごし方は変わります。

体を動かしたい子。

一人で絵本を読みたい子。

友達とごっこ遊びをしたい子。

じっくり製作をしたい子。

それぞれの遊びがぶつからないように空間を分けたり、落ち着いて過ごせる場所を用意したりすることで、子どもは自分の遊びに集中しやすくなります。

環境構成は、

「部屋をきれいに見せること」

ではありません。

子どもがどう過ごすのかを考えて、空間をつくることです。

「教える保育」だけではなく「自分で気づける環境」をつくる

保育では、子どもに何かを教えることもあります。

危険なこと。

生活の仕方。

道具の使い方。

大人が分かりやすく伝える必要がある場面もあります。

ただ、すべてを大人が教えてしまうと、子ども自身が考える機会は少なくなります。

例えば積み木遊び。

何度積んでも崩れてしまう子どもがいたとします。

大人から見れば、

「大きい積み木を下に置けばいい」

とすぐに分かるかもしれません。

そこで答えを教えることもできます。

でも、

「さっきはどこから崩れた?」

「どうしたら倒れにくくなるかな」

と少し待ってみる。

すると子ども自身が、

「こっちを下にしてみる」

と考えることがあります。

保育者に求められるのは、何も教えないことではありません。

「今は教える場面なのか」

「少し待てば自分で考えられそうなのか」

を見極めることです。

環境を通して行う保育では、この「自分で気づける余白」を大切にします。

保育者は環境をつくり、その後の子どもの姿を見る

環境構成というと、

「環境をつくること」

に意識が向きます。

しかし、本当に大切なのはその後です。

環境を変えたことで、

子どもはどう遊んだか。

何に興味を持ったか。

遊びは広がったか。

困っていることはなかったか。

友達との関係はどう変わったか。

を見ます。

例えば製作コーナーをつくったとします。

材料をたくさん置いた。

机も用意した。

見た目はとても良い。

それでも、誰も使わないことがあります。

そのとき、

「せっかく用意したのに」

で終わるのではなく、

なぜ使わないのか。

今の子どもたちの興味と合っているのか。

材料が多すぎて選びにくくないか。

場所が落ち着かないのではないか。

と考えます。

環境構成は、

環境をつくる。

子どもの姿を見る。

環境を変える。

また子どもの姿を見る。

この繰り返しです。

良い保育環境は「子どもの姿」から考える

その環境が良いかどうかを判断するとき、私はまず子どもの姿を見ます。

例えば、

夢中になって遊んでいる。

自分で遊びを選んでいる。

友達と相談している。

何度も試している。

自分なりの方法を考えている。

困ったときに保育者へ助けを求められる。

こうした姿が見られるなら、その環境が子どもの育ちを支えている可能性があります。

反対に、

保育者の指示を待つ時間が多い。

遊びがすぐ終わる。

同じ場所でトラブルが続く。

「先生、これ使っていい?」という確認ばかりになる。

落ち着いて遊べる場所がない。

という姿が続くなら、環境を見直す必要があるかもしれません。

子どもの姿は、

「今の環境がどう機能しているか」

を教えてくれます。

年齢や発達によって必要な環境は変わる

良い環境は、年齢によっても変わります。

0歳児では、安心して特定の大人と関われる環境が大切です。

1・2歳児になると、

「自分でやってみたい」

という思いが強くなります。

自分で玩具を選ぶ。

自分で靴を履こうとする。

自分で食べようとする。

そうした経験を支えられる環境が必要になります。

3歳頃からは友達との関わりがさらに広がり、4・5歳児になると、自分たちで相談しながら遊びを発展させる姿も増えてきます。

同じ玩具。

同じレイアウト。

同じ関わり。

を毎年繰り返せばよいわけではありません。

今の子どもたちの発達や興味に合わせて、環境も変えていく必要があります。

「安全」と「主体性」はどちらか一方を選ぶものではない

環境を考えるとき、保育現場で難しいのが安全とのバランスです。

私は指導検査への対応や保育巡回の両方に関わる中で、この難しさを何度も感じてきました。

安全管理では、

避難経路。

家具の配置。

危険物。

死角。

転倒や落下の危険。

などを確認します。

一方、保育の質を見るときには、

子どもが自分で選べているか。

自分で物を取り出せるか。

挑戦できているか。

遊び込めているか。

という視点も必要です。

どちらも子どものためです。

だから、

「安全か、主体性か」

の二択ではありません。

「安全に挑戦できる環境をどうつくるか」

を考えることが大切です。

危険をすべて取り除けば良いわけではない

例えば、はさみ。

危険だからと大人だけが管理し、子どもがほとんど使わなければ、けがの可能性は低くなるかもしれません。

しかし、子どもが安全な使い方を経験する機会も少なくなります。

だからこそ、

年齢や発達に合ったはさみを使う。

使用するときの約束を共有する。

保育者が見られる範囲で使う。

安全に置ける場所を決める。

といった環境を整えます。

危険を放置することと、子どもに挑戦する機会をつくることは違います。

必要なのは、

「危険をゼロにする」

ではなく、

「予測できる危険をできる限り減らしたうえで、子どもが経験できる環境をつくる」

という視点です。

園長・主任が保育環境を見るときのポイント

園長や主任がクラスを見るとき、

「保育者が何をしているか」

だけを見るのではなく、

「その環境の中で子どもがどう過ごしているか」

を見たいところです。

例えば、

・子どもが自分で遊びを選んでいるか
・必要な物を自分で取り出せるか
・遊び込める時間があるか
・同じ場所でトラブルが繰り返されていないか
・保育者の指示を待つ時間が多くなっていないか
・落ち着いて過ごせる場所があるか
・子どもの興味に合わせて環境が変化しているか
・保育者が子どもの考える時間を待てているか

といったところです。

そして、保育者に、

「どうしてここにこれを置いたの?」

と聞いてみます。

「この子たちが最近ここで遊んでいて」

「この場所でぶつかることが多かったので変えました」

「子どもが自分で取れるように高さを変えました」

という答えが返ってくる。

それは、子どもの姿を見ながら環境を考えているということです。

環境構成を見るということは、保育室の見た目を評価することではありません。

環境と子どもの姿のつながりを見ることだと思います。

「環境は一度つくったら終わり」ではない

私は職員に、

「環境は一度つくったら完成ではないよ」

と伝えることがあります。

子どもは成長します。

興味も変わります。

友達との関係も変わります。

できることも増えます。

4月には必要だった環境が、秋には合わなくなっていることもあります。

昨日まで夢中だった遊びに、突然興味を示さなくなることもあります。

だから、

「せっかくつくったから残す」

ではなく、

「今の子どもに合っているか」

を見直します。

環境が完成しないことは、悪いことではありません。

むしろ、子どもの姿に合わせて変わっていくことが自然です。

「保育は環境で8割決まる?」との違い

環境構成について、さらに実践的に知りたい方は、

「保育は環境で8割決まる?|子どもの主体性を育てる環境づくりを現役園長が解説」

も参考にしてください。

この記事では「環境を通して行う保育」という基本的な考え方を中心に紹介していますが、そちらの記事では、

子どもが片付けない。

遊びが広がらない。

落ち着かない。

といった具体的な場面から、環境をどう見直すかを詳しく紹介しています。

遊びと環境は切り離して考えられない

保育園での遊びも、環境と深くつながっています。

同じ子どもでも、

十分な素材がある。

遊ぶ時間がある。

安心できる保育者がいる。

友達と相談できる。

続きを残しておける。

という環境があることで、遊びは大きく広がることがあります。

反対に、

すぐに片付けなければならない。

自分で玩具を選べない。

大人の許可がなければ使えない。

いつも正解を教えられる。

という環境では、子どもが自分で考える場面は少なくなります。

遊びがなぜ子どもの学びになるのかについては、「遊びはなぜ大切?保育園で遊ぶことが『学び』になる理由」で詳しく紹介しています。

まとめ|環境を通して行う保育は「子どもの姿から次の環境を考える保育」

環境を通して行う保育とは、

子どもが周囲の環境に自ら関わり、さまざまな経験を重ねながら育っていくことを大切にする保育です。

環境は、玩具や保育室だけではありません。

保育者。

友達。

自然。

時間。

空間。

生活の流れ。

子どもを取り巻くさまざまなものが環境になります。

だからこそ、保育者が考えたいのは、

「何を教えよう」

だけではありません。

「どんな環境なら、この子が自分からやってみようと思えるだろう」

「どんな環境なら、もう少し考えることができるだろう」

「どんな環境なら、安心して友達と関われるだろう」

ということです。

そして、環境をつくった後には子どもの姿を見る。

うまくいかなければ、また変える。

その繰り返しが保育です。

良い環境に、一つの正解はありません。

今の子どもたちに合っているかどうかが大切です。

私は園長としてさまざまな保育を見てきましたが、保育が上手な先生ほど、特別な環境をつくっているわけではありません。

子どもをよく見ています。

「最近、この遊びが増えたな」

「ここでよくトラブルが起きるな」

「この子は今、これに興味があるんだな」

そんな小さな姿に気づき、必要に応じて環境を変えています。

子どもを変えようとする前に、環境を見る。

そして、環境を変えたら、また子どもの姿を見る。

この繰り返しこそが、「環境を通して行う保育」を日々の保育で実践することなのだと思います。

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