「走っちゃダメ!」「触っちゃダメ!」そんな言葉が増えていませんか?子どもの主体性や自己肯定感を育てるために大切な、肯定的な言葉がけと保育の考え方を現場経験をもとに解説します。
この記事でわかること
- 「ダメ!」を減らす保育が大切な理由
- 子どもの人権を尊重する保育との関係
- ペップトークの考え方を保育へ取り入れる方法
- 肯定的な言葉がけの具体例
- 子どもの主体性を育てる関わり方
「ダメ!」は本当に子どもへ伝わっているのでしょうか
保育をしていると、
「走っちゃダメ!」
「押しちゃダメ!」
「それはダメ!」
と、とっさに声を掛けてしまう場面があります。
もちろん、危険な場面では子どもの安全を守るために、とっさの制止が必要なこともあります。
しかし、日常の保育を振り返ると、「ダメ」という言葉が口癖になってはいないでしょうか。
「ダメ」という言葉は、文字どおり否定です。
大人でも否定され続ければ、自信を失ったり、「どうせ自分は…」という気持ちになったりすることがあります。
子どもも同じです。
まだ自分の気持ちを十分に言葉で表現できないからこそ、大人からの言葉は子どもの心に大きな影響を与えます。
「ダメ!」ではなく、行動の背景を考える
ここで誤解してほしくないのは、
「好き勝手にやらせましょう。」
という話ではありません。
大切なのは、
なぜその行動をしているのか。
そこを考えることです。
なぜ走っているのでしょうか。
楽しいからでしょうか。
急いでいるのでしょうか。
友達を追いかけているのでしょうか。
子どもの行動には、必ず理由があります。
その理由を理解しようとする姿勢こそが、子どもの人権を尊重する保育につながります。
近年、こども家庭庁や自治体の指導監査でも、子どもの人格や権利を尊重した関わりが重視されています。
保育者には、行動だけを見るのではなく、その背景まで考える視点が求められています。
ペップトークに学ぶ「肯定的な言葉がけ」
近年、教育やスポーツの分野で注目されているものに「ペップトーク」という考え方があります。
ペップトークとは、相手のやる気や前向きな行動を引き出すために、短く、分かりやすく、肯定的な言葉で伝えるコミュニケーションです。
保育でそのまま取り入れる必要はありませんが、「否定ではなく、望ましい行動を伝える」という考え方は、子どもへの言葉がけにも大いに参考になります。
「走っちゃダメ!」より「歩こうね」
例えば、おもちゃを持って部屋の中を走っている子どもがいたとします。
つい、
「走っちゃダメ!」
と言ってしまいそうになります。
しかし、子どもの頭に残りやすいのは「走る」という言葉です。
さらに、「なぜダメなのか」までは十分に伝わりません。
そこで、
「歩こうね。」
「歩くとお友達にぶつからないね。」
「歩くと転ばずに遊べるね。」
このように、してほしい行動を伝える言葉へ変えてみます。
保育者は、子どもへ「何をやめてほしいか」ではなく、「どうしてほしいか」を伝える専門職です。
言葉だけで伝わらなければ、環境で伝える
もちろん、言葉だけで全てが伝わるわけではありません。
だからこそ、保育では環境構成も大切です。
例えば、
走っているイラストに「×」を付けるより、
歩いているイラストに「○」を付ける。
歩く場所に足形を貼る。
視覚的な目印を使う。
このように、子どもが自然と望ましい行動を選びやすい環境を整えることも、保育者の大切な役割です。
子どもの興味や主体性を受け止める
子どもが片付けをしない。
そんな場面もよくあります。
でも、
「片付けなさい。」
だけで終わらせてしまう前に、
なぜ片付けたくないのか。
まだ遊び足りないのか。
もっと試したいことがあるのか。
そんな視点で見てみると、子どもの姿が違って見えてきます。
時には、その子が納得するまで遊び込める時間を保障することも必要です。
幼児クラスであれば、
「あと5分遊んだら片付けよう。」
「長い針がここまで来たらおしまいだよ。」
といったように、時間の見通しを一緒に考えることも、自分で行動を切り替える力につながります。
「ダメ!」を減らすことは、自己肯定感を育てること
毎日、
「ダメ。」
「違う。」
「やめて。」
そんな言葉ばかりを聞いていたら、大人でも意欲を失います。
子どもも同じです。
もちろん、危険な場面では毅然と止める必要があります。
しかし、それ以外の場面では、
「どうしたらできるかな。」
「どう伝えたら伝わるかな。」
と考え続けることが、保育者の専門性ではないでしょうか。
否定ではなく肯定。
制止ではなく理解。
命令ではなく提案。
その積み重ねが、子どもの主体性や自己肯定感を育て、「自分で考えて行動する力」につながっていくのだと思います。
まとめ
「ダメ!」という言葉は、時には必要です。
しかし、それが日常の口癖になってしまうと、子どもの行動の背景を見る機会を失ってしまいます。
保育者が少しだけ言葉を変え、子どもの思いを受け止める姿勢を持つことで、子どもは安心して挑戦し、自ら考えて行動する力を育んでいきます。
今日から一つだけでも構いません。
「ダメ!」を、「どうしてほしいか」を伝える言葉へ変えてみませんか。
その小さな積み重ねが、子どもの大きな成長につながっていくはずです。
参考資料
- こども家庭庁「保育所保育指針」
- こども家庭庁「保育所等における不適切な保育への対応に関する通知」
- 文部科学省「幼稚園教育要領」
- 一般財団法人日本ペップトーク普及協会「ペップトークの基本的な考え方」


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