【現場の保育士向け】その子の「今」に寄り添うインクルーシブ保育|今日からできる関わり方と実践のヒント

保育内容
この記事は約11分で読めます。

日々の保育の中で、

「この子には、どう関わればいいのだろう?」

「どこまで配慮していいのかな?」

「これは甘やかしにならないだろうか?」

と悩むことはありませんか。

子どもによって、得意なことも苦手なことも違います。

集団の中ですぐに活動へ入れる子もいれば、少し時間が必要な子もいます。

言葉で伝えることで理解できる子もいれば、目で見て分かるようにした方が安心できる子もいます。

音や人の多さが気になってしまう子。

予定の変更が苦手な子。

友達との関わり方をまだうまく調整できない子。

こうした一人ひとりの違いを前提に、

「どうすれば、この子が安心してこの場所で過ごせるだろう?」

と考えていくことが、インクルーシブ保育の大切な考え方です。

インクルーシブ保育は、特定の子どもだけに特別な支援を行うことではありません。

障害の有無や発達の特性などにかかわらず、すべての子どもが、

「ここにいていいんだ」

「自分らしく過ごしていいんだ」

と思える環境をつくっていくことです。

  1. インクルーシブ保育は「みんな同じ」にすることではない
  2. 「特別扱い」ではなく「必要な配慮」と考える
  3. 保育者は「指導する人」だけではなく「伴走する人」
  4. 子どもの「困った行動」は、実は「困っているサイン」かもしれない
    1. 噛む・叩く
    2. 落ち着きがない
    3. 集団に入らない
    4. こだわりが強い
  5. 子どもを変える前に、環境を変えてみる
  6. 「できた・できない」だけで子どもを評価しない
  7. 子どもの自己肯定感を守る3つの「安心」
    1. ① 失敗しても大丈夫と思える
    2. ② 他の子と比べられない
    3. ③ 気持ちを受け止めてもらえる
  8. 迷った時、「誰を後回しにするか」ではなく「何を優先するか」
    1. まずは安全
    2. 次に、強い不安やパニックへの対応
    3. その次に、周囲への影響を考える
    4. 「見ているだけ」も参加の一つ
  9. クールダウンは「排除」ではない
  10. インクルーシブ保育は、担任一人の頑張りでは続かない
  11. 迷った時は、4つの順番で考えてみる
    1. STEP1|まず安全を確認する
    2. STEP2|その前に何があったのかを見る
    3. STEP3|今、何が足りないのかを考える
    4. STEP4|一人で抱えず共有する
  12. 「判断と責任を一人に集中させない」園づくり
  13. インクルーシブ保育に「正解」はない
  14. まとめ|「その子を変える」のではなく、「その子が過ごしやすい環境」を考える
  15. 内部リンクインクルーシブ保育とは?不適切保育はどう変わった?心理的安全性とは?

インクルーシブ保育は「みんな同じ」にすることではない

インクルーシブ保育について考える時、まず大切にしたいのが、

「全員を同じようにすること」と「一人ひとりを尊重すること」は違う

ということです。

例えば、制作活動。

全員が同じ道具を使い、同じ方法で作品を完成させることが「公平」に見えるかもしれません。

でも、筆をうまく握れない子がいたらどうでしょうか。

持ちやすい筆に変える。

道具の使い方を工夫する。

必要に応じて、保育士が一部を支える。

それによって、その子も同じ活動に参加できるのであれば、それは「特別扱い」ではありません。

その子が参加するために必要な環境を整えているだけです。

集団遊びでも同じです。

ルールを理解することが難しい子に、

「ルールを守れないなら参加できないよ」

と伝えるのではなく、

ルールを少し分かりやすくする。

見本を見せる。

最初は簡単な役割から参加してもらう。

こうした工夫によって、子どもが集団の中に入れることがあります。

大切なのは、

「みんなと同じことができるか」ではなく、「その子が参加できる環境になっているか」

という視点です。

「特別扱い」ではなく「必要な配慮」と考える

保育現場では、

「この子だけ特別にしていいのかな?」

という迷いが出ることがあります。

しかし、全員に同じ対応をすることが、必ずしも公平とは限りません。

例えば、

見通しがあると安心できる子には、活動の流れを伝える。

音に敏感な子には、刺激を減らせる場所を用意する。

手先の操作が苦手な子には、使いやすい道具を用意する。

集団の中に入ることが難しい子には、まず見学から参加できるようにする。

こうした配慮によって、その子がスタートラインに立てるのであれば、それは「甘やかし」ではありません。

むしろ、

その子が持っている力を発揮するための環境を整えること

だと考えることができます。

保育者は「指導する人」だけではなく「伴走する人」

保育士は、子どもにさまざまなことを教える仕事でもあります。

生活習慣。

友達との関わり。

社会のルール。

危険なこと、安全なこと。

もちろん、必要なことは伝えていかなければなりません。

ただ、

「正しい行動をさせなければ」

という気持ちが強くなりすぎると、いつの間にか、

「できるようにすること」

が目的になってしまうことがあります。

そんな時は、少し視点を変えてみます。

「なぜできないのだろう?」

ではなく、

「どうすれば、この子はできるようになるだろう?」

と考えてみる。

「どうしてそんなことをするの?」

ではなく、

「この子は、何に困っているのだろう?」

と考えてみる。

「こら!」

と行動を止めるだけではなく、

「何があったの?」

と、その行動の背景を見ようとする。

保育士が子どもの前を歩いて引っ張っていくのではなく、

子どもの隣に立って、一緒に進んでいく。

私は、これが「伴走する保育」なのだと思います。

子どもの「困った行動」は、実は「困っているサイン」かもしれない

保育の中では、

「叩く」

「噛む」

「落ち着かない」

「集団に入らない」

「こだわりが強い」

といった姿が見られることがあります。

もちろん、安全を守るために止めなければならない場面もあります。

しかし、

「困った行動だから、やめさせる」

だけでは、その子がなぜその行動をしているのかが見えなくなってしまいます。

例えば、友達を叩いてしまう子。

「叩かない!」

と伝えることは必要です。

でも、それだけで終わらず、

「言葉で伝える前に手が出てしまったのかな?」

「嫌なことをうまく伝えられなかったのかな?」

「距離が近すぎて困っていたのかな?」

と考えてみる。

すると、保育士の関わり方も変わってきます。

噛む・叩く

「攻撃的な子」と決めつけるのではなく、気持ちを言葉で伝えることが難しい可能性を考える。

行動が起きる前の状況を観察し、

「嫌だったんだね」

「まだ遊びたかったんだね」

など、気持ちを代弁する。

落ち着きがない

「座っていられない子」と捉えるだけではなく、

「身体を動かす必要があるのかもしれない」

と考えてみる。

荷物を運ぶ。

準備を手伝う。

身体を使う遊びを取り入れる。

その子が持っているエネルギーを、別の形で活かせる環境をつくります。

集団に入らない

「参加しない子」ではなく、

「まだ安心して参加できないのかもしれない」

と考えてみる。

最初は見ているだけでもいい。

保育士の近くから参加してもいい。

途中から入ってもいい。

「参加するか、しないか」の二択ではなく、参加の仕方に幅を持たせることで、その子が集団とのつながりを保てることがあります。

こだわりが強い

「わがまま」と捉える前に、

「見通しが持てないことに不安を感じているのかもしれない」

と考えてみます。

次に何をするのか伝える。

終わりの時間を知らせる。

予定を絵や写真で見えるようにする。

こうした工夫で安心できる子もいます。

大切なのは、

行動だけを見るのではなく、その行動の背景を見ること

です。

子どもを変える前に、環境を変えてみる

インクルーシブ保育を考える上で、私が特に大切だと思うのがこの視点です。

子どもが活動に入れない。

「もっと集中して」

ではなく、

「この活動の時間は長すぎないかな?」

子どもが何度も走ってしまう。

「走らない!」

ではなく、

「走りたくなるような環境になっていないかな?」

子どもが何度も「次は何?」と聞く。

「さっき言ったでしょ」

ではなく、

「見通しを持てるようにしたら安心できるかもしれない」

子どもが片付けられない。

「早く片付けて!」

ではなく、

「どこに何を片付けるのか、分かりやすくなっているかな?」

こうして考えてみると、

「子どもを変える保育」から「環境を変える保育」へ

視点を変えることができます。

これは、インクルーシブ保育だけではなく、保育そのものを考える上で、とても大切な考え方だと思います。

「できた・できない」だけで子どもを評価しない

子どもを見ていると、

「今日はできた」

「まだできない」

という結果に目が向きやすくなります。

でも、本当に大切なのは、その子の中で何が変化しているかです。

昨日は活動を見ているだけだった。

今日は少し近くまで来た。

昨日は途中で離れた。

今日は最後まで参加できた。

昨日は怒ってしまった。

今日は「嫌」と言葉で伝えられた。

こうした小さな変化も、子どもにとっては大きな成長です。

だからこそ、

「他の子と比べる」のではなく、「昨日のその子と比べる」

という視点を持ちたいと思います。

子どもの自己肯定感を守る3つの「安心」

インクルーシブな保育環境をつくるためには、物理的な環境だけではなく、子どもの心の安心も大切です。

① 失敗しても大丈夫と思える

うまくできなかったことだけを指摘するのではなく、

「やってみたね」

「ここまでできたね」

と、挑戦したことにも目を向けます。

失敗しても、もう一度やってみようと思える環境をつくります。

② 他の子と比べられない

「○○ちゃんはできているよ」

「みんなできているよ」

という言葉は、子どもを動かすためには使いやすい言葉です。

でも、その言葉によって、

「自分はできない子なんだ」

と感じてしまうこともあります。

比べる相手は、他の子どもではありません。

昨日の自分と今日の自分。

そこに目を向けていきたいと思います。

③ 気持ちを受け止めてもらえる

行動が良いか悪いかを伝える前に、

「嫌だったんだね」

「まだ遊びたかったんだね」

「怖かったのかな」

と、まず気持ちを受け止める。

気持ちを受け止めることと、すべての行動を認めることは違います。

「叩きたかったんだね。でも、友達を叩くのはやめよう」

というように、

気持ちは受け止めながら、行動には適切な線引きをする。

このバランスも大切です。

迷った時、「誰を後回しにするか」ではなく「何を優先するか」

保育現場では、担任一人で複数の子どもを見なければならない場面があります。

一人が泣いている。

一人が走っている。

別の子が友達とトラブルになっている。

その時に、

「全員に同時に完璧に対応しなければ」

と思ってしまうと、保育士自身が苦しくなります。

現実的には、全員に同時に対応することはできません。

だからこそ、

「誰を後回しにするか」ではなく、「今、何を最優先に守るか」

という考え方を持っておくことが大切です。

まずは安全

けがにつながる危険がある。

友達を叩く、噛むなどの行動が起きている。

道路や高所など、重大な事故につながる可能性がある。

こうした場合は、安全を最優先します。

次に、強い不安やパニックへの対応

強い不安やパニック状態になっている子どもには、まず安心できる状態をつくります。

声を小さくする。

刺激を減らす。

必要に応じて周囲との距離を取る。

落ち着くまで待つ。

無理に説明しようとするよりも、まず安心を取り戻すことを優先します。

その次に、周囲への影響を考える

一人の行動によって集団全体が大きく乱れている場合には、環境を調整します。

活動を一度止める。

場所を変える。

役割を変える。

子どもたちの待ち時間を減らす。

その場にいる子ども全体が安心して過ごせるように考えます。

「見ているだけ」も参加の一つ

集団に入れない子がいた時、

「みんなと一緒にやろう」

と無理に参加させる必要はありません。

「ここから見ていていいよ」

「先生の隣にいようか」

と伝えることで、その子とのつながりを保つことができます。

参加には、

「完全に参加する」

「参加しない」

の二つしかありません。

見ている。

近くにいる。

一部分だけ参加する。

途中から参加する。

こうした参加の仕方があってもいいのです。

クールダウンは「排除」ではない

パニックになってしまった時など、一時的に集団から離れて落ち着くことが必要な場合があります。

これを、

「みんなから外してしまった」

と捉える必要はありません。

もちろん、

「言うことを聞かないから、あっちに行ってなさい」

という罰として集団から離すこととは意味が違います。

本人が安心して気持ちを立て直すために、

「少しここで休もうか」

と場所や時間を用意する。

それは、

「その子がもう一度集団に戻るための時間」

と考えることができます。

大切なのは、「排除」ではなく「回復のための選択肢」になっているかということです。

インクルーシブ保育は、担任一人の頑張りでは続かない

ここは、現場でとても大切なところです。

インクルーシブ保育というと、

「担任が一人ひとりに合わせて、もっと工夫しなければ」

と考えてしまうかもしれません。

でも、担任一人の努力や我慢だけでは続きません。

「この子、最近こういう場面で困っている」

「こうしたら少し落ち着いた」

「この場面では、まだ難しい」

こうした情報を職員間で共有することが大切です。

そして、

一人の保育士が抱えている困りごとを、園全体の課題として考えること。

それがチーム保育だと思います。

迷った時は、4つの順番で考えてみる

対応に迷った時には、次の4つを順番に考えてみると整理しやすくなります。

STEP1|まず安全を確認する

けがの危険はないか。

本人や周囲の子どもが危険な状態になっていないか。

まずは安全を確保します。

STEP2|その前に何があったのかを見る

行動だけを見るのではなく、

「直前に何があった?」

と振り返ります。

音が大きかった。

友達との距離が近かった。

予定が急に変わった。

疲れていた。

眠かった。

活動が長かった。

こうした背景が見えてくることがあります。

STEP3|今、何が足りないのかを考える

叱る前に、

「この子に今必要なのは何だろう?」

と考えてみます。

言葉かもしれません。

見通しかもしれません。

休息かもしれません。

安心できる場所かもしれません。

保育士とのつながりかもしれません。

STEP4|一人で抱えず共有する

そして、最後に必ず共有します。

「今日こういう場面があった」

「こう関わったら落ち着いた」

「まだ対応に迷っている」

という情報を、園長や主任、他の職員と共有します。

一人で抱え込まないことは、子どものためだけではありません。

保育士自身を守ることにもつながります。

「判断と責任を一人に集中させない」園づくり

保育士が困った時に、

「自分のクラスだから、自分で何とかしなければ」

と思ってしまう園では、どうしても担任に負担が集中します。

でも、子どもの育ちは担任一人で支えるものではありません。

園長、主任、担任、フリーの職員、看護師など、それぞれの立場から子どもを見ることで、見えてくるものがあります。

担任が気づいたことを共有する。

主任が別の視点を加える。

園長が園全体の環境を見直す。

必要であれば外部の専門機関とも連携する。

そうやって、一人の子どもをみんなで支えていく。

私は、これがインクルーシブ保育を継続していくために欠かせないことだと思います。

インクルーシブ保育に「正解」はない

インクルーシブ保育について学ぶと、

「こうすればいいんだ」

という方法を探したくなります。

もちろん、具体的な方法を知ることは大切です。

ただ、同じ方法がすべての子どもに合うとは限りません。

昨日はうまくいった方法が、今日は合わないこともあります。

同じ子どもでも、体調や気分によって必要な配慮が変わることもあります。

だからこそ、

方法を覚えること以上に、子どもの姿を見ること

が大切なのだと思います。

「今日はどうだった?」

「何が安心につながった?」

「何が難しかった?」

「明日は何を変えてみよう?」

こうした振り返りを繰り返していく。

それが、その子に合った保育をつくっていきます。

まとめ|「その子を変える」のではなく、「その子が過ごしやすい環境」を考える

インクルーシブ保育とは、

「みんなを同じようにすること」

ではありません。

一人ひとりの違いを前提に、

「どうすれば、この子が安心してこの場所にいられるだろう?」

と考える保育です。

集団に入れない子がいたら、

「どうして入らないの?」

ではなく、

「どうしたら参加しやすくなるだろう?」

と考えてみる。

落ち着かない子がいたら、

「どうしてじっとできないの?」

ではなく、

「この子に今、何が必要なのだろう?」

と考えてみる。

こだわりが強い子がいたら、

「わがまま」

で終わらせるのではなく、

「何が見通せないのだろう?」

と考えてみる。

保育とは、子どもを大人の都合に合わせることではありません。

もちろん、集団生活の中では守らなければならないルールもあります。

安全のために止めなければならない行動もあります。

それでも、

「子どもを変える」だけではなく、「環境や関わり方を変える」という選択肢を持っていること。

それが、保育士としてとても大切なのだと思います。

そして、インクルーシブ保育は担任一人で完成させるものでもありません。

迷ったら相談する。

気づいたら共有する。

うまくいかなかったら振り返る。

そして、また環境を変えてみる。

その繰り返しです。

子どもにとっても、保育者にとっても、

「今の自分のままで、ここにいていい」

と思える園をつくっていく。

完璧ではなくても、少しずつ。

その積み重ねこそが、インクルーシブな保育につながっていくのではないでしょうか。

内部リンクインクルーシブ保育とは?不適切保育はどう変わった?心理的安全性とは?

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