この記事でわかること
- 園内研修が盛り上がらない本当の理由
- 職員が主体的に参加したくなる研修の組み立て方
- 60分の園内研修モデル
- 心理的安全性を高める声掛け
- 研修講師として経験してきた失敗と学び
はじめに
主任や副主任、園長になると、園内研修を担当する機会が増えてきます。
また、外部研修を受講した職員が園内で内容を共有することも少なくありません。
私自身も主任・園長時代に園内研修を担当し、その後、本社勤務では複数園を対象とした研修講師として、多くの園で研修を実施してきました。
しかし、最初からうまくできていたわけではありません。
「一生懸命話しているのに伝わらない。」
「職員の反応が薄い。」
「研修が一方通行になってしまう。」
そんな経験を何度もしてきました。
現在振り返ると、その原因は研修内容ではなく、「研修の設計」にあったと感じています。
この記事では、私自身の経験をもとに、「伝わる園内研修」の作り方をお伝えします。
① 研修は受講者の気持ちから始まる
研修を成功させるために最初に考えるべきなのは、研修内容ではありません。
「今、目の前の職員はどんな気持ちで座っているのか。」
これを理解することです。
忙しい保育の合間に行われる園内研修。
職員の中には、
「早く終わらないかな。」
「また研修か。」
「外部研修の共有だけなら資料を配ればいいのでは?」
そんな気持ちで参加している人もいるかもしれません。
この状態で内容だけを話しても、相手の心には届きません。
だからこそ、研修の導入が重要になります。
アイスブレイクや問いかけを取り入れ、「今日は自分に関係がある内容だ」と感じてもらうことが、研修成功の第一歩です。
② 研修の目的とゴールを最初に共有する
以前の私は、時間が限られていることを理由に、
「それでは資料をご覧ください。」
と、いきなり本題へ入っていました。
しかし今では、この進め方は間違っていたと感じています。
研修で最初に伝えるべきことは、
- なぜこの研修を行うのか
- 誰のための研修なのか
- 今日何を持ち帰ってほしいのか
この3つです。
例えば、
「今日の研修では、明日から保育で一つ実践できることを持ち帰ってください。」
この一言だけでも、参加者の聞き方は変わります。
人は目的が分かると、必要な情報を探しながら話を聞くようになります。
③ 60分の園内研修モデル
ここは一般的な企業研修や成人学習理論(アンドラゴジー)、保育現場での園内研修実践を踏まえると、以下の流れがバランスが良いでしょう。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 5分 | アイスブレイク・雰囲気づくり |
| 5分 | 目的・ゴールの共有 |
| 15分 | テーマ・法令・背景説明 |
| 20分 | ワーク・グループディスカッション |
| 10分 | 発表・共有 |
| 5分 | まとめ・明日から実践すること |
研修の目的は「知識を増やすこと」ではありません。
明日から行動が変わることです。
そのため、一方的に講義をするだけではなく、「考える」「話す」「共有する」時間を必ず設けることが重要です。
根拠
成人学習理論(アンドラゴジー)では、成人は一方向の講義よりも、自身の経験を振り返り、対話や課題解決を通して学ぶ方が理解・定着しやすいとされています。また、教育心理学では「アクティブラーニング」は主体的な学習を促進する方法として広く活用されています。
④ 保育士は「話したい職業」である
これは私自身の経験則でもありますが、多くの保育士は保育について話すことが好きです。
ただし、
話す時間がありません。
日々の保育、連絡帳、保護者対応、行事準備…。
忙しさの中で、保育について語り合う時間は意外と少ないものです。
だからこそ園内研修では、
「講師が話す時間」
よりも
「職員同士が話す時間」
を意図的に作ることが大切です。
それだけでも研修の満足度は大きく変わります。
⑤ 想像できる事例ほど理解される
どれだけ専門的な話でも、
現場で起こりそうな事例
実際に経験したケース
子どもの姿
これらを交えて説明すると、一気に理解が深まります。
園内研修は大学の講義ではありません。
「難しい知識を伝える場」ではなく、
「明日から保育で使えるヒントを持ち帰る場」
であることを忘れないようにしています。
本社勤務で研修講師になって学んだこと
ここからは、園長時代とは違う視点で学んだことをお伝えします。
本社勤務では、初めて訪問する園で研修を担当する機会が数多くありました。
同じ園へ年間4~6回継続して訪問することもあれば、
新任園長研修
単発研修
主任研修
など、さまざまな対象へお話しさせていただきました。
経験は最大の教材になる
研修は回数を重ねるほど上達します。
最初は、
話し方
間の取り方
進行
どれも決して上手ではありませんでした。
しかし毎回、
「今日はここが良くなかった。」
「次はこうしてみよう。」
と振り返りを繰り返しました。
まさにPDCAです。
この積み重ねが、自分自身の研修スタイルを作ってくれました。
緊張はなくならない
何十回研修を行っても、
緊張はします。
ただ、
伝わらなくなるだけです。
私自身、
顔が熱くなる感覚
早口になる
そんな癖がありました。
まずは自分の癖を知ること。
これが講師として大きな成長につながりました。
空気を作るのは講師
研修会場は、
静かで張り詰めた空気のこともあります。
そんな時は、
資料を配りながら雑談する。
「ありがとうございます。」
と一人ひとりへ声を掛ける。
アイスブレイクで笑顔を引き出す。
このような小さな積み重ねで空気は大きく変わります。
心理的安全性を作る
私が必ず伝える言葉があります。
「答えたくない質問は無理に答えなくて大丈夫です。」
「答えられる範囲で結構です。」
「今日は評価する場ではありません。」
この一言があるだけで、
参加者は安心して発言できるようになります。
心理的安全性が確保されることで、
グループワークも活発になり、
研修全体の質が大きく向上します。
まとめ
研修は、
話し方でも、
資料でもありません。
設計がすべてです。
- 受講者を理解する
- ゴールを共有する
- 話す時間を作る
- 心理的安全性を確保する
- 明日から実践できる内容にする
この5つを意識するだけで、園内研修は大きく変わります。
私自身、主任・園長・本社勤務(一部研修講師業務)という立場を経験したからこそ、「伝えること」の難しさと奥深さを学びました。
そして今でも、研修とは「知識を伝える場」ではなく、「人の行動を変えるきっかけをつくる場」だと考えています。
もしこれから園内研修を担当する方がいれば、一度に完璧を目指す必要はありません。
一回の研修で一つ改善する。
その積み重ねが、講師としても、園全体の学びとしても、大きな成長につながっていくはずです。


コメント