この記事でわかること
- 自己肯定感とは何か
- 幼児期に自己肯定感が重要な理由
- 保育士が日々の保育でできる関わり方
- 家庭で保護者が意識したい言葉掛け
- 園長として、そして父親として大切にしていること
自己肯定感とは「自分は大切な存在だ」と思える力
近年、「自己肯定感」という言葉を耳にする機会が増えました。
保育の現場でも、保育所保育指針や幼稚園教育要領の考え方の中で、自己肯定感につながる経験はとても大切にされています。
しかし、「自己肯定感を育てましょう」と言われても、
「たくさん褒めればいいの?」
「失敗させないことが大切なの?」
と悩む保育士や保護者も少なくありません。
実は、自己肯定感とは単に「褒められて育つ力」ではありません。
自己肯定感とは、
「自分は大切な存在なんだ」
「ありのままの自分でいても大丈夫なんだ」
と思える心の土台です。
何かができるから価値があるのではなく、できてもできなくても、自分という存在そのものを認められる感覚。
これが自己肯定感です。
幼児期は、この土台を築くとても大切な時期です。
だからこそ、保育者や保護者の関わり方が子どもの将来に大きな影響を与えます。
自己肯定感が高い子どもとは?
自己肯定感が高い子どもは、「何でもできる子」ではありません。
失敗しない子でもありません。
むしろ、
失敗しても、
「もう一回やってみよう。」
と思える子どもです。
友達とけんかをしても、
「仲直りしたい。」
と思える子どもです。
分からないことがあっても、
「聞いてみよう。」
と思える子どもです。
つまり、自分を信じて挑戦し続けられる子どもです。
反対に、自己肯定感が低くなると、
「どうせできない。」
「怒られるからやめよう。」
「失敗するくらいならやらない。」
という気持ちが強くなってしまいます。
保育者が育てたいのは、「何でもできる子」ではありません。
挑戦できる子どもなのです。
自己肯定感と自己効力感の違い
自己肯定感と似た言葉に「自己効力感」があります。
この二つは混同されることがありますが、意味は少し違います。
自己肯定感は、
「自分は大切な存在だ。」
と思える気持ちです。
一方で自己効力感は、
「自分ならできそう。」
と思える自信です。
例えば、
縄跳びが一回も跳べなくても、
「私は私でいい。」
と思えるのが自己肯定感。
何度も挑戦して、
「次は跳べそう。」
と思えるのが自己効力感です。
どちらも大切ですが、自己効力感は自己肯定感という土台があってこそ育ちやすくなります。
【園長経験から】自己肯定感が育っている子どもの共通点
園長として多くの子どもたちを見てきました。
自己肯定感が育っている子どもには、ある共通点があります。
それは、
「失敗を恐れていない」
ということです。
積み木が崩れても、
また作る。
鬼ごっこで負けても、
もう一回やる。
製作で失敗しても、
違う方法を試してみる。
そんな姿がたくさん見られます。
反対に、大人が結果ばかりを求める環境では、
「失敗したくない。」
という気持ちが強くなり、挑戦そのものを避ける子どももいます。
私は、保育者に求められるのは「失敗させないこと」ではなく、失敗しても安心して挑戦できる環境をつくることだと考えています。
自己肯定感は毎日の関わりの中で育つ
自己肯定感は、特別な教材やプログラムで育つものではありません。
毎日の保育の中で、
「先生が笑顔で迎えてくれた。」
「話を最後まで聞いてくれた。」
「失敗しても認めてもらえた。」
「頑張ったことを見てもらえた。」
そんな小さな経験の積み重ねが、
「自分は大切な存在なんだ。」
という気持ちにつながります。
だからこそ、保育者の一つひとつの言葉や表情、関わり方には、大きな意味があるのです。
自己肯定感を育てる保育士の関わり方|大切なのは「褒めること」ではない
「自己肯定感を育てるには、たくさん褒めればいい。」
そう考えられることがあります。
もちろん、子どもの頑張りを認めることは大切です。
しかし、私は園長として多くの保育を見てきた中で、「褒めること」以上に大切なことがあると感じています。
それは、
子どもの存在そのものを認めること。
結果だけではなく、過程を見てもらえた経験。
失敗しても受け止めてもらえた経験。
自分の思いを最後まで聞いてもらえた経験。
こうした積み重ねが、自己肯定感を育てていきます。
① 子どもの「できた」ではなく「頑張った」を認める
保育の中では、
「すごいね!」
「上手だね!」
と声を掛ける場面がたくさんあります。
もちろん悪いことではありません。
しかし、それだけでは子どもは、
「上手にできた時だけ褒めてもらえる。」
と感じてしまうことがあります。
例えば製作活動。
完成した作品だけを褒めるのではなく、
「最後まで頑張って作ったね。」
「いろいろ考えて工夫していたね。」
「何回も挑戦していたね。」
そんな言葉掛けを意識すると、子どもは結果だけでなく努力にも価値があることを学びます。
【園長経験から】
私は保育を見ていると、「すごいね」が多い先生ほど、少し気になることがありました。
もちろん、褒めること自体は大切です。
ただ、「すごいね」を繰り返すだけでは、子どもは「何が良かったのか」が分かりません。
それよりも、
「最後まで諦めなかったね。」
「友達に優しく教えてあげていたね。」
「昨日より高く積めたね。」
と、具体的に認めてもらえた子どもの方が、自信を持って次の挑戦へ向かっていく姿を多く見てきました。
② 子どもの話を最後まで聞く
自己肯定感を育てるために、とても大切なのが「話を聞くこと」です。
忙しい保育の中では、
「あとでね。」
「分かったよ。」
と短く返事をしてしまうこともあります。
しかし、子どもにとって、
「自分の話を最後まで聞いてもらえた。」
という経験は、
「自分は大切にされている。」
という安心感につながります。
話の内容は、大人から見れば小さなことかもしれません。
「ダンゴムシを見つけた。」
「葉っぱがハートだった。」
「ブロックが高く積めた。」
でも、その子にとっては大発見です。
だからこそ、最後まで聞いてあげることが大切です。
③ 「待つ保育」が自己肯定感を育てる
私は以前の記事でも、「待つことの大切さ」について書きました。
自己肯定感も、待つ保育と深くつながっています。
例えば、靴を履く場面。
時間がないと、
つい履かせてしまいたくなります。
しかし、
少し時間が掛かっても、
自分で履けた経験は、
子どもにとって大きな成功体験になります。
保育者が先回りしてしまうと、
「先生がやってくれる。」
という経験ばかりになってしまいます。
一方で、
「自分でできた。」
という経験は、
「自分にもできる。」
という自信につながります。
【園長経験から】
私は職員へよく、
「待つことも保育です。」
と伝えていました。
子どもが困っていると、
すぐに手を貸したくなる。
答えを教えたくなる。
でも、その数秒を待つだけで、
子どもは自分で考え始めます。
友達へ相談することもあります。
違う方法を試すこともあります。
その経験こそが、子どもの自己肯定感や主体性を育てています。
保育者は、「教える人」である前に、「育ちを信じて待てる人」でありたいものです。
④ 失敗できる環境をつくる
自己肯定感が高い子どもほど、失敗を恐れません。
それは、失敗しないからではありません。
失敗しても、
「大丈夫。」
「もう一回やってみよう。」
と思える環境があるからです。
例えば積み木。
崩れたら、
また積めばいい。
絵を失敗したら、
描き直せばいい。
鬼ごっこで負けても、
また次があります。
保育者は、
失敗を減らすことよりも、
失敗しても挑戦したくなる環境を整えることが大切です。
⑤ 子どもを他の子と比べない
自己肯定感を下げる大きな原因の一つが「比較」です。
「○○ちゃんはできたよ。」
「お兄さんクラスならできるよ。」
そんな何気ない一言でも、
子どもは、
「自分はできない。」
と感じてしまいます。
比べるなら、
他の子ではなく、
昨日のその子自身です。
「昨日より速く走れたね。」
「前より一人でできるようになったね。」
子どもの成長は、一人ひとり違います。
その子だけの成長を認めることが、自己肯定感につながります。
保育者自身が笑顔でいることも大切
子どもは、大人の表情をよく見ています。
忙しくて余裕がなくなる日もあります。
思うように保育が進まない日もあります。
それでも、子どもにとって保育者は「安心できる存在」です。
笑顔で迎えてもらえる。
困った時に受け止めてもらえる。
失敗しても責められない。
そんな安心感があるからこそ、子どもは新しいことへ挑戦できます。
自己肯定感は、言葉だけで育つものではありません。
保育者の表情やまなざし、寄り添う姿勢からも育まれていくのです。
家庭で自己肯定感を育てる関わり方|保護者に伝えたい5つのポイント
自己肯定感は保育園だけで育つものではありません。
子どもが一番長い時間を過ごす家庭での関わりも、大きく影響します。
特別な教材や習い事は必要ありません。
毎日の何気ない親子の時間が、子どもの心の土台をつくっています。
ここでは、家庭で今日から実践できる関わり方を紹介します。
① 「結果」ではなく「過程」を認める
保護者はどうしても、
「できた!」
という結果に目が向きがちです。
しかし、子どもにとって大切なのは、そこへ至るまでの過程です。
例えば、
初めてボタンを留められた日。
一人で靴を履こうと頑張った日。
何度も転びながら自転車に挑戦した日。
成功したことだけではなく、
「頑張っていた姿」
を見てもらえた経験が、自己肯定感につながります。
「できたね。」だけでなく、
「最後まで頑張ったね。」
「何度も挑戦していたね。」
そんな言葉を掛けてもらえる子どもは、自分の努力に価値を感じられるようになります。
② 子どもの気持ちを否定しない
子どもは毎日、たくさんの感情を経験しています。
悔しい。
悲しい。
嬉しい。
腹が立つ。
その気持ちを、大人がすぐに否定しないことも大切です。
例えば、
「そんなことで泣かないの。」
ではなく、
「悔しかったね。」
「悲しかったね。」
と、まずは気持ちを受け止める。
感情を受け止めてもらえた子どもは、
「自分の気持ちは大切にしてもらえる。」
と感じられるようになります。
自己肯定感は、感情を安心して表現できる環境の中で育っていきます。
③ 「見て!」と言われたら、できるだけ手を止めて見る
これは、私が園長として、そして父親として最も大切にしていることです。
子どもが、
「見て!」
と言った時。
私はできるだけ、その場で手を止めるようにしています。
仕事をしていても。
家事をしていても。
忙しい時でも。
もちろん、すべてに応えられるわけではありません。
それでも、その一瞬を大切にしたいと思っています。
子どもは、
「見て!」
と言いながら、
本当に見てほしいのは作品だけではありません。
「一緒に喜んでほしい。」
「気付いてほしい。」
「認めてほしい。」
そんな気持ちを伝えています。
その思いに応えてもらえた経験は、
「自分は大切な存在なんだ。」
という安心感につながります。
【園長として、父親として感じること】
保育園でも、自宅でも、子どもたちは本当によく
「先生、見て!」
「パパ、見て!」
と声を掛けてくれます。
その時、
私はできるだけ目を見て、
笑顔で、
「本当だ!」
「すごい発見だったね。」
と返すようにしています。
子どもの発見は、大人から見れば小さなことかもしれません。
アリが歩いていた。
葉っぱが丸かった。
積み木が高く積めた。
虹が見えた。
でも、その子にとっては人生で初めて出会う感動かもしれません。
その感動を誰かと共有できること。
それが、「自分は大切にされている」という実感につながります。
私は、この積み重ねが自己肯定感を育てるのだと思っています。
④ 夢中になっている時間を邪魔しない
子どもが遊びに集中している時、
大人はつい、
「そろそろ終わり。」
「違う遊びをしよう。」
「こうした方がいいよ。」
と声を掛けてしまうことがあります。
もちろん生活の中では時間の区切りも必要です。
しかし、子どもが何かに夢中になっている時間は、とても貴重です。
私は、子どもが集中している時は、すぐに話しかけるのではなく、そっと近くで見守ることを意識しています。
何かを教えるわけでもありません。
手伝うわけでもありません。
ただ近くにいる。
それだけで、子どもは安心して挑戦を続けることができます。
「困ったら助けてもらえる。」
そんな安心感があるからこそ、自分の力で最後までやり遂げようとする気持ちが育っていきます。
保育でも家庭でも、この「見守る時間」はとても大切です。
⑤ 完璧な親・完璧な保育者である必要はない
自己肯定感について学ぶほど、
「もっと褒めなきゃ。」
「もっと関わらなきゃ。」
と思ってしまう保護者や保育者もいます。
でも、完璧である必要はありません。
忙しい日もあります。
余裕がない日もあります。
つい強く言ってしまう日もあるでしょう。
それでも大切なのは、「今日から少し意識してみよう」という気持ちです。
子どもにとって必要なのは、100点の関わりではありません。
安心して戻ってこられる存在がいることです。
失敗しても受け止めてもらえることです。
「あなたが大好きだよ。」
という思いが、日々の関わりの中で伝わっていることです。
それが、子どもの心を支える土台になります。
子どもと過ごせる時間は、思っているより短い
園長として多くの子どもたちを見送り、父親としてわが子の成長を見ている中で、強く感じることがあります。
それは、子どもと濃密に関われる時間は、本当にあっという間だということです。
昨日まで抱っこを求めていた子が、いつの間にか友達と遊ぶ時間の方が長くなります。
「見て!」と何度も呼んでくれていた子も、成長とともに少しずつ自分の世界を広げていきます。
だからこそ、その限られた時間を大切にしたい。
忙しい毎日の中で難しいと感じることもあるでしょう。
それでも、一日に数分でもいい。
子どもの話を最後まで聞く。
「見て!」に応える。
一緒に笑う。
その積み重ねが、子どもの自己肯定感を育み、将来困難に出会ったときも「自分なら大丈夫」と思える心の支えになっていくと、私は信じています。
保育者が自己肯定感を育てるために忘れてはいけないこと
保育をしていると、
「もっと褒めた方がいいのかな。」
「もっと自信をつけさせたい。」
そう考えることがあります。
もちろん、それも大切です。
しかし、私は園長として多くの保育を見てきた中で、一番大切なのは**「子どもを一人の人として尊重すること」**だと感じています。
子どもだからといって、一方的に指示を受ける存在ではありません。
一人ひとりに思いがあり、考えがあり、伝えたいことがあります。
だからこそ、子どもの話を聞く。
気持ちを受け止める。
挑戦を見守る。
失敗しても安心できる環境をつくる。
こうした日々の積み重ねが、「自分は大切な存在なんだ」という感覚を育てていきます。
自己肯定感は、特別な保育活動の中で育つものではありません。
毎日の何気ない関わりの中で、少しずつ育まれていくものなのです。
自己肯定感が育つ保育は、保育者との信頼関係から始まる
子どもは、安心できる人がいるから挑戦できます。
転んでも、
「大丈夫だよ。」
と言ってくれる先生がいる。
困った時に助けてくれる先生がいる。
嬉しい時に一緒に喜んでくれる先生がいる。
そんな安心感があるからこそ、子どもは失敗を恐れず、新しいことに挑戦できます。
これは、大人でも同じではないでしょうか。
失敗しても受け止めてくれる人がいると思えるからこそ、新しい一歩を踏み出せます。
子どもも同じです。
保育者との信頼関係は、自己肯定感を育てる土台になります。
保護者の皆さんへ伝えたいこと
私は園長として、多くの保護者の方とお話ししてきました。
その中で感じるのは、「ちゃんと育てなければ」と一生懸命になっている方ほど、自分を責めてしまうことがあるということです。
でも、子育てに完璧はありません。
毎日笑顔でいられない日があってもいい。
忙しくて「あとでね」と言ってしまう日があってもいい。
大切なのは、その後に子どもへ向き合おうとすることです。
一緒に笑う時間。
話を聞く時間。
抱きしめる時間。
「大好きだよ」と伝える時間。
そんな時間が積み重なることで、子どもは「自分は愛されている」と感じられるようになります。
それが、自己肯定感の土台になります。
保育者の皆さんへ伝えたいこと
保育は、目に見える成果がすぐに現れる仕事ではありません。
昨日の関わりが、今日すぐに結果として見えるわけではありません。
でも、子どもは確実に育っています。
「先生、見て!」
と笑顔で話しかけてくれること。
失敗しても「もう一回やる!」と挑戦すること。
友達を思いやる姿が見られること。
それらはすべて、日々の保育の積み重ねが形になったものです。
保育者の言葉掛けやまなざしは、子どもの心に残ります。
だからこそ、自分の保育に自信を持ってほしいと思います。
派手な活動をすることよりも、一人ひとりの子どもに丁寧に向き合うこと。
それこそが、子どもの自己肯定感を育てる保育につながります。
園長として伝えたいこと
園長として多くの先生方と保育について話し合ってきました。
その中で私が何度も伝えてきた言葉があります。
「子どもの心が育つ保育をしよう。」
製作が上手にできたか。
運動会が成功したか。
発表会がきれいにそろったか。
もちろん、それらも大切です。
しかし、それ以上に大切なのは、
子どもがその経験を通して何を感じたのか。
何を学んだのか。
どんな自信を得たのか。
ということです。
保育の本当の価値は、目に見える結果だけでは測れません。
子どもの心の中に積み重なった経験こそが、将来を支える力になります。
まとめ|自己肯定感は「あなたは大切な存在だ」というメッセージから育つ
自己肯定感は、たくさん褒めれば育つものではありません。
高価な教材や特別なプログラムが必要なわけでもありません。
大切なのは、子どもが毎日の生活の中で、
「自分は大切にされている。」
「自分は受け入れてもらえている。」
「失敗しても、また挑戦していい。」
と感じられることです。
そのためには、保育者も保護者も、子どもの存在そのものを認める関わりを積み重ねていくことが大切です。
子どもの「見て!」に耳を傾けること。
夢中になっている姿を見守ること。
頑張った過程を認めること。
失敗しても「大丈夫」と伝えること。
その一つひとつが、子どもの自己肯定感を育て、生涯にわたって自分らしく生きる力へとつながっていきます。
私は園長として、そして父親として、これからも子どもたちの「今、この瞬間」を大切にしたいと思っています。
なぜなら、その一瞬の経験や気付きが、その子にとって一生の財産になると信じているからです。
保育者や保護者が少しだけ心に余裕を持ち、子どもの世界に寄り添うことができれば、その時間は子どもにとって何ものにも代えがたい宝物になるでしょう。


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