~安全計画を「作る」から「運用する」へ~
この記事でわかること
- 安全計画が義務化された背景
- 事故が減らない園に共通する特徴
- ヒヤリハットの重要性
- ケガ・事故を減らすために園が取り組むべきこと
安全計画は「作成」がゴールではない
令和5年4月1日から、安全計画の策定が保育所を含む児童福祉施設で義務化されました。
根拠となる法令は、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第6条の3(安全計画の策定等)」です。
法令では、
- 安全計画の策定
- 職員への周知・研修・訓練
- 保護者への周知(保育所)
- 定期的な見直し
まで求められています。
つまり、安全計画は「作ること」が目的ではなく、「日々の保育で運用すること」が法律でも求められているのです。
しかし、一般指導検査でも近年よく確認されるのは、「安全計画がありますか。」ではありません。
- 職員へどのように周知しているか
- 保護者へどのように周知しているか
- 研修や訓練は実施しているか
- 記録として残っているか
など、「運用」ができているかという視点です。
私自身、多くの園を見てきましたが、安全計画を作成していても事故が減らない園には共通点があると感じています。
事故が減らない園の特徴①
安全計画が職員へ浸透していない
安全計画は、全体的な計画と同様に、園全体の方向性を示す大きな計画です。
しかし、その内容が抽象的なままで終わってしまい、
「安全計画を読んだことがない」
「年度初めに説明を受けただけ」
という園も少なくありません。
これでは、安全計画を作成しただけで終わってしまいます。
安全計画は職員一人ひとりが理解し、日々の保育の中で実践できて初めて意味があります。
園長や主任が繰り返し内容を共有し、職員会議や園内研修の中で振り返る仕組みが重要です。
事故が減らない園の特徴②
環境設定を見直す文化がない
事故防止で最も重要なのは、環境設定です。
もちろん、各園によって保育方針や環境は異なるため、「正解」はありません。
しかし、子どもの姿を見ながら環境を見直すことは、保育士として日常的に行っている業務の一つです。
例えば、
- なぜ走ってしまうのか。
- なぜ衝突事故が多いのか。
- なぜ玩具の取り合いが起こるのか。
- なぜ引っかき傷が増えるのか。
こうした出来事を、
「子どもだから仕方ない。」
で終わらせるのではなく、
「環境を変えれば防げることはないか。」
という視点で分析することが重要です。
事故は結果です。
その結果を生み出した環境や保育を見直すことこそが、安全計画の実践につながります。
事故が減らない園の特徴③
ヒヤリハットが活用されていない
事故防止を考える上で欠かせないのが、ヒヤリハットです。
皆さんも研修で一度は見たことがあると思いますが、「ハインリッヒの法則」という有名な考え方があります。
重大事故の背景には、多くの軽微なケガやヒヤリハットが存在するとされており、小さな気づきを積み重ねることが重大事故の予防につながるという考え方です。
私が園長として勤務していた園では、約1年間、0歳児から5歳児まで毎日最低1件のヒヤリハットを各クラスから提出し、全職員へ共有していました。
さらに、擦り傷や軽い打撲など、小さなケガもすべて報告してもらい、原因を分析しました。
その結果、
- ケガ・事故報告:約700件
- ヒヤリハット:約1,500件
- 病院受診(縫合):1件
という結果になりました。
この数字を見て、私は一つ違和感を覚えました。
ヒヤリハットの件数が思っていたより少なかったのです。
理由を分析すると、「1日1件提出」がいつの間にか目標になり、それ以上の気づきが共有されなくなっていたことが分かりました。
そこで翌年度は、「気づいたことはすべて共有する」という文化づくりへ変更しました。
すると、ヒヤリハット件数は約2倍に増加し、一方で軽微なケガは約600件まで減少、重大事故は0件となりました。
もちろん、これだけが理由とは言い切れません。
しかし、小さな気づきを共有し続ける文化が、職員全体の安全意識を高めたことは間違いないと感じています。
事故が減らない園の特徴④
軽微なケガを分析していない
重大事故だけを振り返る園は少なくありません。
しかし、本当に重要なのは軽微なケガです。
毎月、
- ケガの種類
- 発生場所
- 発生時間
- 人員配置
- 状況
などを集計し、職員へ共有する。
その結果をもとに、
- 環境設定
- 保育内容
- 人員配置
を見直していく。
この繰り返しが事故防止につながります。
事故が起きたことを責めるのではなく、「次にどうすれば防げるか」を考える文化を作ることが大切です。
まとめ
安全計画を策定しただけでは、事故は減りません。
事故が減らない園には、
- 安全計画が形だけになっている
- 職員への周知・共有が不足している
- ヒヤリハットを活用できていない
- 軽微なケガを分析していない
- 「子どもだから仕方ない」で終わらせてしまう
という共通点があります。
子どもがケガをすること自体をゼロにすることはできません。
しかし、
- 環境を整えること
- ヒヤリハットを共有すること
- ケガを分析し改善すること
これは園として必ず取り組めることです。
私は園長として、「事故はゼロにできなくても、減らす努力は必ずできる」と職員へ伝え続けてきました。
安全計画は、ファイルの中に保管するための書類ではありません。
職員一人ひとりが理解し、毎日の保育で実践して初めて意味を持つものです。
この記事をきっかけに、自園の安全計画が「作るだけ」で終わっていないか、一度振り返っていただければ幸いです。
根拠法令
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第6条の3(安全計画の策定等)
保育所を含む児童福祉施設は、
- 安全計画を策定すること
- 安全計画に基づく研修・訓練を実施すること
- 職員へ周知すること
- 保護者へ周知すること(保育所)
- 定期的に見直しを行うこと
が義務付けられています。
令和5年4月1日施行。



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