【園長・保育士みんなで創る】離職を防ぎ、ずっと働き続けたくなる保育園づくり|職員が安心して働ける環境を考える

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保育園で働く職員の定着は、今、多くの園が抱えている大きな課題の一つです。

「せっかく育てた職員が辞めてしまう」

「人間関係の悩みから退職してしまった」

「毎日忙しく、職員が疲れている」

「新人がなかなか定着しない」

園長や主任として、こうした悩みを感じることはないでしょうか。

もちろん、給与や勤務時間、休暇の取りやすさなど、働く条件を整えることは大切です。

しかし、職員が長く働き続けられる園をつくるために必要なのは、それだけではありません。

私は、保育園の「働きやすさ」を考えるとき、

「仕事が楽かどうか」だけではなく、「この園で働いていて、自分は大切にされていると感じられるか」

という視点が重要だと考えています。

忙しくても、職員同士で支え合える。

失敗しても、責められるのではなく一緒に考えてもらえる。

困ったときに「助けて」と言える。

自分の仕事が子どもたちの育ちにつながっていると感じられる。

そして、

「ここでもう少し頑張ってみたい」

と思える。

そんな職場環境をつくることが、結果として職員の定着につながっていくのではないでしょうか。

この記事では、園長・主任などの管理者だけではなく、保育士一人ひとりが考えられる「長く働き続けたくなる保育園づくり」について、現場で大切にしたい視点を整理していきます。


保育士が辞めない園をつくることだけを目標にしない

「離職を減らそう」

園として取り組むとき、どうしてもこの言葉が最初に出てきます。

もちろん、職員が辞めないことは大切です。

しかし、私は、

「辞めないようにすること」だけを目的にしてはいけない

と思っています。

なぜなら、職員が辞めないことと、職員が安心して働いていることは、同じではないからです。

辞めてはいないけれど、毎日疲れ切っている。

辞めてはいないけれど、園に対して不満を抱えている。

辞めてはいないけれど、「仕方なく続けている」。

これでは、本当の意味での定着とは言えません。

目指したいのは、

「辞めない園」ではなく、「ここで働き続けたいと思える園」

です。

そのためには、職員が安心して働きながら、保育士として成長できる環境をつくっていく必要があります。


1.働き方改革は「仕事を減らすこと」だけではない

働き方改革というと、

「書類を減らしましょう」

「残業をなくしましょう」

「業務を効率化しましょう」

という話になりがちです。

もちろん、これらは重要です。

しかし、業務を減らすことだけが目的になってしまうと、

「じゃあ、何のために減らすの?」

というところが抜けてしまいます。

私は、働き方改革の目的は、

保育の質を高めるために、職員に「時間」と「余白」を取り戻すこと

だと考えています。

子どもと向き合う時間。

保育を振り返る時間。

職員同士で話す時間。

学ぶ時間。

そして、休む時間。

これらがなければ、保育の質を高めていくことは難しくなります。

だからこそ、

「何を減らすか」

だけではなく、

「何のために減らすのか」

を園全体で共有することが大切です。

例えば、

「この書類をなくします」

だけでは、職員は単純に仕事を一つ失ったとしか感じないかもしれません。

一方で、

「この書類をなくすことで、子どもの姿を職員同士で共有する時間を増やしたい」

と伝えれば、意味が変わります。

改革は、方法から始めるのではなく、

「なぜ、それをするのか」という目的から始める。

これは、園運営において非常に大切な視点だと思います。


2.園の業務を「子どものためになっているか」で見直す

保育園には、長年続いている仕事がたくさんあります。

「昔からやっているから」

「前の園長先生の時からやっているから」

「他の園もやっているから」

そんな理由で残っている業務も、実は少なくありません。

そこで一度、

「これは本当に必要な仕事なのか?」

と立ち止まって考えてみることが必要です。

私は業務を見直すとき、

「それは子どもの育ちにつながっているか」

という視点を持つことが大切だと考えています。

例えば、

  • 子どもの命や安全を守るために必要なこと
  • 保育の質を高めるために必要なこと
  • 保護者との信頼関係を築くために必要なこと
  • 慣習として何となく続いていること
  • 職員の負担が大きいわりに効果が分かりにくいこと

これらを一度整理してみる。

「やらなければならない仕事」と「何となく続けている仕事」を同じように扱わないことです。

そして、

「やめる」「減らす」「まとめる」「簡単にする」

という選択肢を持つ。

業務改善とは、新しいことを増やすことではありません。

むしろ、

「今までやってきたことを、一度疑ってみること」

から始まるのだと思います。


3.ICTは「導入すること」ではなく「職員を楽にすること」が目的

ICTも同じです。

新しいシステムを導入したからといって、必ず業務が楽になるわけではありません。

紙でやっていた仕事を、そのままICTに置き換えただけでは、

「入力する場所が増えただけ」

になってしまうこともあります。

大切なのは、

「このICTによって、職員の何が楽になるのか」

を考えることです。

出欠管理。

連絡帳。

書類作成。

情報共有。

保護者への連絡。

集金や事務作業。

こうした業務は、ICTによって効率化できる部分があります。

一方で、

子どもの姿を見ながら職員同士で話すこと。

保護者と顔を合わせて話すこと。

特別な場面で丁寧に言葉を交わすこと。

こうしたものまで、すべて効率化すればよいわけではありません。

効率化するところと、人が丁寧に関わるところを分ける。

このメリハリが重要です。


4.職員の定着を支えるのは「人間関係」だけではなく「関係性」

保育士の退職理由として、人間関係が挙げられることは少なくありません。

ただ、

「人間関係を良くしましょう」

と言われても、具体的に何をすればいいのか分からないことがあります。

そこで私は、

「人間関係を良くする」より、「日常の中で関係性をつくる」

ことが大切だと思っています。

例えば、

「おはようございます」

「今日どう?」

「昨日大丈夫だった?」

「さっきの保育、よかったね」

そんな小さな言葉です。

実は、こうした何気ないコミュニケーションが、いざというときの相談のしやすさにつながります。

普段ほとんど話していない人に、

「実は困っています」

とは、なかなか言えません。

反対に、

「ちょっと聞いてほしいんですけど……」

と自然に言える関係ができていれば、問題が大きくなる前に相談できます。

だからこそ、

雑談は無駄な時間ではありません。

職員同士の関係性をつくるための大切な時間です。


5.「報告・連絡・相談して」と言う前に、管理者から発信する

園長や主任になると、

「最近、職員から相談が上がってこない」

「もっと報告・連絡・相談をしてほしい」

と感じることがあります。

もちろん、職員側にも報告・連絡・相談する責任はあります。

ただ、私は管理者側も一度立ち止まって考える必要があると思っています。

「職員が相談しに来やすい関係を、自分はつくれているだろうか」

ということです。

例えば、

「今日、こんなことがあったよ」

「保護者からこんな嬉しい言葉をもらったよ」

「この前の保育、すごくよかったと思った」

と、管理者側から情報を渡していく。

職員から報告を待つだけではなく、

管理者からも「逆ホウレンソウ」をする。

そうすると、職員側も少しずつ、

「この人には話していいんだ」

という安心感を持てるようになります。

報告・連絡・相談は、仕組みだけではなく、関係性の上に成り立つものです。


6.職員を育てるとき、「できていないこと」ばかり見ない

新人や若手職員を指導していると、

「ここができていない」

「もっとこうしてほしい」

という部分が目につきます。

もちろん、改善が必要なことは伝えなければいけません。

しかし、それだけでは職員は疲れてしまいます。

人は、

「自分は何をしても認めてもらえない」

と感じたときに、仕事への意欲を失いやすくなります。

だからこそ、

「今日の子どもへの声かけ、よかったよ」

「保護者への伝え方、すごく丁寧だったね」

「この場面で子どもの気持ちを待てたのはよかった」

と、具体的な事実を伝える。

「すごいね」

だけではなく、

「何がよかったのか」

を伝えることが大切です。

褒めることは、甘やかすことではありません。

その人が持っている専門性を本人に気づいてもらうことでもあります。


7.指導するときも、「責める」のではなく「成長につなげる」

もちろん、保育の中には改善しなければならないこともあります。

不適切な言葉かけ。

安全への配慮不足。

保護者対応の問題。

職員間のコミュニケーション不足。

こうしたことを見過ごしてはいけません。

ただし、

「なんでこんなことをしたの?」

と感情的に責めても、問題の解決にはつながりません。

大切なのは、

事実と人格を分けること。

例えば、

「あなたはいつも雑」

ではなく、

「今日の○○の場面で、子どもへの声かけが少し強くなっていたよ」

と、事実を伝える。

その上で、

「どうすれば次は変えられそう?」

と一緒に考える。

指導とは、

相手を負かすことではなく、相手が次により良い行動を選べるようにすること

です。

そして、管理者自身が間違えたときには、

「ごめんね」

「ありがとう」

を素直に言えることも大切です。

園長だから謝らない。

主任だから弱みを見せない。

そんな必要はありません。

むしろ、管理者が素直に謝る姿を見せることで、

「間違えても大丈夫」

という文化が園の中に生まれていきます。


8.職員同士が「ありがとう」を言える園にする

職員の定着を考えるとき、制度ばかりに目が向きがちですが、日々の小さな承認も大きな力を持っています。

例えば、

「今日、フォローしてくれてありがとう」

「助かったよ」

「○○先生がいてくれてよかった」

そんな言葉です。

保育の仕事は、成果が数字として見えにくい仕事です。

だからこそ、

「自分の仕事が誰かの役に立っている」

と感じられることが大切です。

職員同士で、

「子どもたちのこんな姿がよかった」

「今日こんな嬉しいことがあった」

「○○先生のこんな関わりが素敵だった」

という出来事を共有するのもいいでしょう。

園内に「良かったこと」が蓄積されていくと、職員が互いの良さを見つける文化が少しずつ育っていきます。


9.「お互い様」は、誰かの我慢で成り立たせない

保育現場では、

結婚。

妊娠・出産。

育児。

介護。

家庭の事情。

さまざまなライフステージの変化があります。

その時、

「今は早番・遅番に入れません」

「勤務時間を短くしたいです」

という職員が出てくることもあります。

その職員を守ることは大切です。

しかし、一方で、

「その分を誰かがずっと背負っている」

状態になってしまえば、今度は別の職員が疲れてしまいます。

だから、

「お互い様だから我慢して」

だけではいけません。

お互い様を成立させるためには、仕組みが必要です。

フォローしている職員の負担を把握する。

早番・遅番などの負担を適切に評価する。

休暇を取りやすくする。

管理者が「助かっているよ」と言葉にする。

必要であれば、勤務体制そのものを見直す。

大切なのは、

誰かを守るために、別の誰かが犠牲にならないこと。

「お互い様」という言葉を、誰かの我慢の上に成立させないことです。


10.休憩は「取れたら取るもの」ではない

保育士は、子どもたちの安全を守る仕事です。

だからこそ、

「忙しいから休憩は後で」

「今日は人がいないから仕方ない」

と、休憩を削り続けることには注意が必要です。

疲れていると、

普段なら気にならないことにイライラする。

声が強くなる。

周囲を見る余裕がなくなる。

判断が遅れる。

こうしたことが起こりやすくなります。

休憩は、

職員を甘やかすための時間ではなく、安全な保育を続けるための時間

です。

休憩や事務作業の時間を勤務の中に最初から組み込む。

ノンコンタクトタイムを確保する。

どうしてもまとまった時間が難しければ、園の実情に合わせて分けて確保する。

そして何より、

園長や主任が率先して休む姿を見せること。

管理者がいつも休まず働いていると、

「休憩を取ってはいけない園なのかな」

という空気が生まれてしまいます。


11.「いつもと違う」に気づける管理者でいる

職員の心身の状態は、ある日突然大きく崩れるとは限りません。

遅刻が増えた。

小さなミスが増えた。

以前より口数が減った。

表情が暗くなった。

逆に、急にイライラするようになった。

こうした小さな変化が、サインになっていることがあります。

だからこそ、管理者は、

「仕事ができているか」だけではなく、「その人がいつもと違わないか」

を見ることが大切です。

「最近どう?」

「何か困っていることある?」

「ちょっと疲れてない?」

そんな何気ない声かけが、職員にとって大きな意味を持つことがあります。

もちろん、園長や主任だけですべてを解決する必要はありません。

必要に応じて法人本部や専門機関などにつなぐ。

一人で抱え込まない。

これも管理者の大切な役割です。


12.「何でも話せる園」と「何を言っても許される園」は違う

心理的安全性を高めようとすると、

「何でも言える職場にしましょう」

という話になります。

これは大切です。

しかし、

何を言ってもいいことと、安心して意見を言えることは違います。

子どもの安全を脅かすこと。

不適切な保育。

他者を傷つける言動。

こうしたことまで、

「個性だから」

「その人らしさだから」

と受け入れる必要はありません。

大切なのは、

人を否定せず、行動については必要なことをきちんと話し合えること。

「あなたがダメ」ではなく、

「この行動については、一緒に見直そう」

と言える関係です。

それが、本当の意味での安心できる職場なのではないでしょうか。


園長・主任だけが頑張っても、職員の定着はつくれない

ここまで、園長や主任など管理者側の視点を多く書いてきました。

しかし、職員が長く働ける園をつくるのは、管理者だけではありません。

保育士一人ひとりが、

「ありがとう」

を伝える。

困ったときに、

「手伝って」

と言う。

誰かが困っていたら、

「大丈夫?」

と声をかける。

新人が困っていたら、

「分からないことある?」

と聞いてみる。

そして、

「自分ばかりが大変」

ではなく、

「今、この園で何が起きているのか」

をみんなで考える。

こうした小さな積み重ねが、園の文化をつくります。

園の雰囲気は、園長一人ではつくれません。

職員一人ひとりの日々の言葉や行動によってつくられていきます。


「働きやすい園」と「働きがいのある園」は、どちらも必要

職員の定着を考えるとき、

「働きやすさ」

ばかりに目が向くことがあります。

もちろん大切です。

しかし、

働きやすいけれど、やりがいがない。

休みは取りやすいけれど、成長できない。

人間関係は悪くないけれど、自分の仕事に意味を感じられない。

それでは、長く働き続けたいと思えるとは限りません。

反対に、

やりがいはあるけれど、休めない。

成長できるけれど、毎日疲弊している。

子どもは好きだけれど、人間関係が苦しい。

これも長続きしません。

だからこそ、

「働きやすさ」と「働きがい」の両方を考える。

そして、その中心にいるのが、

子どもの育ちと、職員の幸せ

なのだと思います。


まとめ|「辞めない園」ではなく「ここで働き続けたいと思える園」へ

職員の定着を考えるとき、

「どうすれば辞めないでくれるだろう」

と考えるだけでは、なかなか本質にはたどり着けません。

大切なのは、

「どうすれば、この園で働くことに安心や誇りを感じてもらえるだろう」

と考えることです。

そのために、

業務を見直す。

ICTを活用する。

休憩を確保する。

職員同士の対話を増やす。

良かったことを伝える。

困ったときにSOSを出せる関係をつくる。

ライフステージに合わせた働き方を考える。

そして、管理者自身も間違えたら謝り、職員の声に耳を傾ける。

一つひとつは、決して特別なことではありません。

でも、こうした小さな積み重ねが、少しずつ園の文化を変えていきます。

保育園は、子どもたちが一日の多くを過ごす場所です。

だからこそ、そこで働く保育者自身も、

「ここにいていい」

と思える場所であってほしい。

職員が安心して働ける。

職員同士が支え合える。

自分の仕事に意味を感じられる。

そんな環境があってこそ、保育者は子どもたちに丁寧に向き合うことができます。

子どもにとって安心できる園をつくることと、職員にとって安心して働ける園をつくることは、別々の話ではありません。

職員が幸せに働けること。

その先に、子どもたちのより良い育ちがあります。

だからこそ、離職を防ぐための取り組みではなく、

「ここで働き続けたい」と思える園を、職員みんなでつくっていく。

その視点を大切にしたいと思います。



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