集団活動の途中で、気持ちが大きく崩れてしまう子。
泣き続ける。
怒る。
友達に手が出てしまう。
その場から離れてしまう。
そんな姿を見た時、
「みんなと一緒に参加させなきゃ」
「このまま集団から離していていいのかな」
「これって、排除になっていないだろうか」
と悩んだことはないでしょうか。
保育士としては、できるだけみんなと一緒に過ごしてほしいと思います。
集団の中で経験してほしいこともあります。
だからこそ、子どもを集団から離すことに、どこか罪悪感を持ってしまうこともあると思います。
でも、私はここで一度、考え方を変えてみることが大切だと思っています。
「集団から離れること」と「集団から排除されること」は、同じではありません。
子どもが刺激を受けすぎて、自分で気持ちを立て直すことが難しくなっているのであれば、一時的に集団から距離を取ることが、その子にとって必要な場合があります。
大切なのは、
「みんなと同じ場所にいさせること」
ではなく、
「その子が安心して、自分を取り戻せる環境をつくること」
なのではないでしょうか。
今回は、集団活動から一時的に離れて気持ちを整える「クールダウン」について、現場で大切にしたい考え方と具体的な関わり方を整理していきます。
クールダウンは「罰」ではない
まず、クールダウンを考える上で一番大切なのは、
「その場から離すこと=罰」になっていないか
ということです。
例えば、
「もう怒っているから、あっちに行ってなさい」
「そんなことをするなら、みんなと一緒に遊べません」
「落ち着くまでそこで反省してなさい」
このような関わりであれば、子どもにとっては「罰」として受け止められる可能性があります。
一方で、
「ちょっと人が多くて疲れたかな。ここで少し休もうか」
「落ち着いたら、また一緒にやってみよう」
「見ているだけでも大丈夫だよ」
という関わりであれば、意味が大きく変わります。
目的が、
「反省させること」から「安心を取り戻すこと」
に変わるからです。
クールダウンとは、子どもを集団から切り離すための時間ではありません。
集団に戻るために、あるいは次の活動へ向かうために、自分自身を立て直す時間
と考えることができます。
「みんなと一緒」が、いつも子どものためとは限らない
保育では、
「みんなで一緒に」
という場面がたくさんあります。
朝の会。
製作。
絵本。
散歩。
給食。
集団遊び。
行事。
もちろん、集団の中で経験することには大きな意味があります。
でも、
「みんなと一緒に参加すること」
そのものが目的になってしまうと、少し苦しくなることがあります。
例えば、大きな音が苦手な子がいる。
人が密集した場所が苦手な子がいる。
活動の切り替えが難しい子がいる。
疲れがたまると気持ちをコントロールしにくくなる子がいる。
そんな子に、
「みんな参加しているから、あなたも参加しよう」
と求め続けたらどうでしょうか。
もしかすると、その子に必要なのは「もっと頑張ること」ではなく、
刺激を減らすことなのかもしれません。
保育者が考えるべきなのは、
「どうすれば、この子を集団に参加させられるか」
だけではありません。
「どうすれば、この子が安心して参加できる状態をつくれるか」
という視点も必要です。
クールダウンは「安心基地」をつくること
クールダウンをするときに大切なのは、
「とりあえず別室に行かせる」
ということではありません。
その子が安心して過ごせる場所を、日頃からつくっておくことです。
例えば、
- 絵本コーナー
- 少し離れて座れる場所
- パーテーションで区切ったスペース
- 刺激の少ない場所
- 保育者と一対一で過ごせる場所
などです。
ここで重要なのは、
「問題が起きた子を入れる場所」にしないこと。
普段から、
「ここに来ると少し落ち着けるね」
という経験を積んでおくことです。
そうすれば、そこは「罰を受ける場所」ではなく、
「安心できる場所」
になります。
年齢によって「落ち着き方」は違う
クールダウンの方法は、すべての年齢で同じではありません。
子どもの発達段階や、その時の状態によって、必要な関わりは変わります。
0〜1歳児|まずは安心できる大人との関係をつくる
0〜1歳児は、自分の気持ちを言葉で整理することはできません。
泣く。
反り返る。
身体を動かす。
物を取ろうとする。
こうした姿を見た時、
「どうして泣いているの?」
と理由を聞いても、子ども自身が説明できるわけではありません。
この時期に大切なのは、まず安心です。
抱っこをする。
刺激の少ない場所へ移動する。
いつも関わっている保育者がそばにいる。
声をかけすぎず、ゆっくり関わる。
こうした対応を積み重ねていきます。
反省を求めたり、みんなの前で注意したりすることよりも、
「この人と一緒なら大丈夫」
という安心感をつくることが先です。
2〜3歳児|言葉で整理できないことを前提にする
2〜3歳になると、少しずつ言葉で気持ちを表現できるようになります。
一方で、気持ちが大きくなった時に、それを言葉で整理することはまだ難しい時期です。
噛む。
叩く。
物を投げる。
寝転ぶ。
大声を出す。
そんな姿が出ることもあります。
もちろん、安全を守るために止めなければならない行動はあります。
でも、興奮している最中に、
「どうして叩いたの?」
「お友達はどういう気持ち?」
「ちゃんと謝りなさい」
と長く話しても、こちらの言葉が十分に届かないことがあります。
まずは、
安全を確保する。
そして、
落ち着ける状態をつくる。
その後で、必要に応じて短い言葉で振り返る。
この順番を意識することが大切です。
4〜5歳児|「自分で選べる」クールダウンへ
4〜5歳になると、自分の気持ちを少しずつ言葉にできるようになります。
だからこそ、
「どうしたら落ち着けそう?」
「ここで少し休む?」
「見ているだけにする?」
など、本人が選べる余地をつくることも大切です。
例えば、
「今は参加しなくてもいいよ。見ていてもいいからね」
と伝える。
「少し休んだら、また一緒にやってみようか」
と見通しを持たせる。
「準備ができたら教えてね」
と戻るタイミングを委ねる。
こうした関わりによって、
「参加できなかった」ではなく、「自分に合った方法で参加した」
という経験に変えていくことができます。
パニックになっている時は「言葉を増やせば伝わる」とは限らない
子どもが大きく興奮している時、
「ちゃんと話を聞いて」
「先生はこう言ったよね」
「どうしてそんなことをしたの?」
と、言葉で理解させようとしてしまうことがあります。
でも、気持ちが大きく揺れている時には、普段なら理解できる言葉も受け止めにくくなります。
だからこそ、
言葉を増やすより、刺激を減らす。
という考え方が大切です。
声の大きさを落とす。
周囲の子どもとの距離を取る。
必要以上に質問しない。
そばに座る。
背中にそっと手を添える。
その子が安心できる保育者が関わる。
こうした「静かな関わり」の方が、子どもに届くことがあります。
「戻すこと」を急がない
クールダウンをすると、
「いつになったら戻れる?」
と保育者側が焦ることがあります。
活動が終わってしまう。
他の子どもたちを待たせている。
予定がずれてしまう。
そう考えると、早く集団に戻したくなる気持ちも分かります。
でも、
「早く戻すこと」が目的になってしまうと、クールダウンの意味が変わってしまいます。
まだ気持ちが整っていないのに、
「もう大丈夫でしょ。戻ろう」
と戻してしまう。
すると、また崩れてしまう。
その繰り返しになることもあります。
もちろん、ずっと集団から離れていればいいということではありません。
大切なのは、
「その子が戻れる状態になっているか」
を見ることです。
「見ているだけでもいいよ」
「先生と一緒に行ってみる?」
「次の活動から参加してみようか」
など、戻り方にも選択肢をつくってみます。
「参加できなかった」を失敗にしない
ここは、私自身がクールダウンを考える上で特に大切だと思うところです。
集団活動に最後まで参加できなかった。
途中で離れてしまった。
見学していた。
それを、
「今日は参加できなかった」
という失敗で終わらせてしまわないことです。
例えば、
「今日は途中から見ていたね」
「最後は先生と一緒に片付けられたね」
「自分で落ち着ける場所に行けたね」
そんな小さな変化を見つける。
それだけでも、その子の経験の意味は変わります。
保育者が見てほしいのは、
「できた・できなかった」だけではありません。
その子が、
「自分はどうしたら落ち着けるのか」
を少しずつ知っていくことも、大切な育ちです。
クールダウンの場所が「問題児の隔離場所」になっていないか
クールダウンを取り入れる時には、もう一つ注意したいことがあります。
それは、
「この子は問題があるから、いつもここにいる」
という状態にならないことです。
クールダウンが必要な子だけが使う場所にしてしまうと、本人も周囲の子どもも、
「ここにいる=問題がある」
という認識を持ってしまう可能性があります。
だからこそ、普段からその場所を、
「絵本を読む場所」
「少し休む場所」
「一人で遊ぶこともできる場所」
として使えるようにしておく。
必要な時に誰でも使える場所にしておく。
そうすることで、「特別な子のための場所」ではなく、
「自分の気持ちを整えるための場所」
になります。
これはインクルーシブな環境をつくる上でも、とても大切な視点だと思います。
クールダウンを「子どもを変える方法」にしない
クールダウンについて考える時、
「これをすれば落ち着く」
という方法論だけを求めてしまうことがあります。
でも、同じ方法がすべての子どもに合うわけではありません。
一人で静かに過ごした方が落ち着く子もいます。
保育者がそばにいた方が安心する子もいます。
身体を動かした方が切り替えやすい子もいます。
少し時間を置いた方がいい子もいます。
だから、
「クールダウン=静かな場所で座らせる」
と決めてしまう必要はありません。
大切なのは、
「この子は、何があると自分を取り戻しやすいのだろう?」
と考えることです。
ここでも、子どもを変えようとするのではなく、環境や関わり方を調整するという視点が大切になります。
保育者が一人で抱え込まないことも大切
クールダウンが必要な場面が続くと、
「この子への対応で手が取られてしまう」
「他の子どもたちをどうしよう」
「自分の対応が悪いのかな」
と、担任一人が抱え込んでしまうことがあります。
でも、ここでも一人で何とかする必要はありません。
どんな場面で気持ちが崩れやすいのか。
何が刺激になっているのか。
どんな関わりをすると落ち着きやすいのか。
どれくらいの時間が必要なのか。
チームで共有していきます。
例えば、
「活動の後半になると崩れやすい」
「人が密集すると難しい」
「○○先生がそばにいると落ち着きやすい」
「静かな場所に移動すると5分程度で戻れる」
こうした情報が共有されれば、一人の保育士の経験が、園全体の保育の知恵になります。
「集団に戻す」より「安心して戻れる」を大切にする
保育の中では、どうしても、
「みんなと同じように」
というゴールを設定しやすくなります。
でも、インクルーシブ保育の視点で考えるなら、
同じ行動をすることだけが「参加」ではありません。
輪の外から見ている。
保育者の隣で参加する。
途中から参加する。
少し離れた場所から参加する。
今日は見学だけにする。
そうした参加の仕方があってもいい。
大切なのは、
「集団に合わせられたか」
だけではなく、
「その子が安心できる形で、集団とのつながりを持てたか」
ということなのではないでしょうか。
まとめ|「みんなと一緒」より、「安心していられる」を大切に
クールダウンは、子どもを集団から排除するための方法ではありません。
子どもが刺激や感情の高まりから一度距離を取り、
自分自身を取り戻すための時間
として考えることができます。
大切なのは、
「早く集団に戻すこと」
ではありません。
「どうして参加できないの?」
と考えることでもありません。
まずは、
「今、この子は何に困っているのだろう?」
「何があれば、少し安心できるだろう?」
と考えてみる。
そして、
安全を守る。
刺激を減らす。
言葉をかけすぎない。
安心できる場所をつくる。
本人に合った戻り方を選べるようにする。
必要であれば、チームで支える。
こうした積み重ねが大切です。
保育の中では、
「みんなと一緒にできること」
が評価されやすいかもしれません。
でも、子どもによっては、
「今日は離れて休めた」
ことが、その子にとって大きな一歩になることもあります。
「参加できなかった」のではなく、
「自分に必要な時間を過ごした」。
「集団から外れた」のではなく、
「安心できる場所から、もう一度集団とのつながりを取り戻した」。
そんなふうに捉えることができれば、クールダウンの意味も変わってくるのではないでしょうか。
子どもを集団に合わせることだけを考えるのではなく、
その子が安心して集団とつながれる方法を、一緒に探していく。
それもまた、インクルーシブ保育の大切な一歩なのだと思います。
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