保育士の言葉掛け一つで子どもの主体性や自己肯定感は大きく変わります。本記事では園長経験をもとに、0〜5歳児の年齢別の言葉掛けや、避けたいNG例、保護者との関わりにも役立つポイントを具体例付きで解説します。
- 「子どもへの言葉掛け、本当にこれでいいのかな?」
- 保護者にも知ってほしい「言葉掛け」の力
- 「早くして!」
- 「なんでできないの?」
- 「○○ちゃんはできているよ」
- 「すごいね!」だけで終わらせない
- 「頑張って!」よりも、今の努力を認める
- 【園長経験から】子どもは、大人の言葉を聞くだけではなく、真似をして育っている
- 大切なのは「上手に話すこと」ではなく、「子どもを理解しようとすること」
- この記事のまとめ
- 内部リンク自己肯定感を育てる保育士の関わり方|園長経験から伝えたい子どもの心を育てる保育とは | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~非認知能力とは?保育で育てるために保育士ができること【現役園長が解説】 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿とは?保育士向けにわかりやすく解説 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~0歳児保育の本質は「教える」ではなく「応答すること」 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~1歳児の「自分で!」を奪わない保育が子どもを伸ばす | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~魔の2歳児(イヤイヤ期)はなぜ起こる?保育者が知っておきたい関わり方 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~3歳児はなぜルールを守れないのか|「わざと」ではなく発達の途中にある姿 | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~4歳児の「嘘」は叱るべき?|発達から考える子どもの本当の気持ち | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~5歳児保育は「教える」から「任せる」へ|就学前に本当に必要な力とは | 保育の知見/キャリア情報局 ~保育の学び.COM~
「子どもへの言葉掛け、本当にこれでいいのかな?」
「先生、みて!」
子どもからそう声を掛けられた時、あなたなら何と返しますか。
「すごいね!」
「上手だね!」
もちろん、その言葉も間違いではありません。
しかし、保育士として長く子どもたちと関わっていると、同じ場面でも言葉を少し変えるだけで、子どもの表情やその後の行動が大きく変わる瞬間に何度も出会います。
私は保育士として現場に立ち、園長として職員を育成し、本部では多くの園を見てきました。
その中で確信していることがあります。
保育士の言葉掛けは、子どもの「今」だけではなく、「これからの生き方」にも影響するということです。
言葉掛け一つで、子どもは「もっとやってみたい」と挑戦するようになることもあれば、「どうせできない」と自信を失ってしまうこともあります。
だからこそ、保育士の言葉には大きな力があります。
この記事では、園長経験をもとに、子どもの主体性や自己肯定感を育てる言葉掛けを、年齢別の具体例や保育現場での実践例を交えながら詳しく解説します。
新人保育士の方はもちろん、日々子どもと向き合っている先生方、そして家庭で子育てをしている保護者の方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。
この記事でわかること
この記事では、次のような内容を詳しく解説します。
- 保育士の言葉掛けが子どもの成長に与える影響
- 子どもの主体性や自己肯定感を育てる関わり方
- 0〜5歳児の年齢別・具体的な言葉掛けの実例
- 保育現場でよくあるNGな言葉掛けと言い換え方
- 園長経験から伝えたい「言葉より大切なこと」
「何を話すか」だけでなく、「なぜその言葉を選ぶのか」まで理解できる内容になっています。
なぜ保育士の言葉掛けは、それほど大切なのか
子どもは毎日、保育者の言葉を聞きながら生活しています。
「ありがとう。」
「できたね。」
「どうしたの?」
「先生はあなたのことを見ているよ。」
その一つひとつの言葉が、子どもの心に少しずつ積み重なっていきます。
特に乳幼児期は、自分自身をどのような存在だと感じるか、その土台がつくられる大切な時期です。
例えば、失敗した時に、
「なんでできないの?」
と言われ続けた子どもと、
「最後まで頑張ったね。」
「どうしたら次はできそうかな?」
と声を掛けられた子どもでは、挑戦に対する気持ちが変わってきます。
もちろん、一度の言葉で人生が決まるわけではありません。
しかし、毎日の積み重ねは、子どもの自己肯定感や主体性、人との関わり方に大きな影響を与えていきます。
だからこそ、保育士の言葉には責任があり、同時に大きな可能性もあるのです。
【園長経験から】新人保育士に最初に伝えていたこと
園長時代、新人保育士へ必ず伝えていたことがあります。
それは、
「子どもを動かそうとして言葉を掛けるのではなく、子どもの気持ちを理解するために言葉を掛けよう。」
ということです。
保育は忙しい仕事です。
朝の受け入れ、散歩、給食、午睡、保護者対応…。
時間に追われる場面も少なくありません。
そんな時ほど、大人は無意識に、
「早くして。」
「座って。」
「片付けて。」
という”指示”が増えてしまいます。
もちろん、安全面や生活の流れを考えれば必要な場面もあります。
しかし、それだけでは子どもは「先生の言うことを聞く」ことが目的になってしまいます。
私は職員へ、
「まずは『どうしたの?』と聞いてみよう。」
と何度も伝えてきました。
例えば、片付けをしない子どもがいた時。
「早く片付けよう。」
ではなく、
「まだ遊びたかったんだね。」
「どこまで作っていたの?」
と気持ちを受け止めることで、子どもの表情は大きく変わります。
気持ちを理解してもらえた安心感があるからこそ、「じゃあ片付けようかな」と自分から動き出せることも少なくありません。
保育士の言葉は、子どもを動かすための道具ではありません。
子どもの心に寄り添い、信頼関係を築くための大切なコミュニケーションなのです。
保護者にも知ってほしい「言葉掛け」の力
言葉掛けは、保育園だけで大切なものではありません。
家庭でも同じです。
例えば、お子さんが一生懸命に絵を描いていたとします。
完成した絵を持ってきて、
「みて!」
と嬉しそうに話しかけてきました。
そんな時、つい、
「上手だね!」
と答えることはありませんか。
もちろん、その一言でも子どもは喜びます。
しかし、もし少しだけ言葉を変えて、
「どこを一番頑張ったの?」
「この色を選んだのはどうして?」
「このお花は誰と見に行った時のお花かな?」
と聞いてみると、子どもは自分の思いや考えを一生懸命に話し始めます。
大切なのは、作品を評価することではありません。
子どもの心に興味を持ち、その子が見ている世界を一緒に味わうことです。
私は保育者としてだけでなく、一人の父親としても、この時間を大切にしています。
子どもが「見て」と伝えてくれた瞬間は、信頼のサインです。
その小さなサインに丁寧に応えることが、「また話したい」「また見てほしい」という気持ちにつながり、親子の信頼関係や自己肯定感を育んでいきます。
言葉掛けに「正解」はない。でも、大切な考え方はある
ここまで読んで、「正しい言葉掛けを覚えなければ」と感じた方もいるかもしれません。
しかし、保育に万能な言葉はありません。
同じ「大丈夫?」という一言でも、安心につながる子もいれば、今はそっと見守ってほしい子もいます。
大切なのは、決まったフレーズを使うことではなく、目の前の子どもをよく見て、その子の気持ちに寄り添うことです。
その子は今、何を感じているのか。
何を伝えたいのか。
どんな言葉を掛けてもらえたら安心できるのか。
そう考えながら言葉を選ぶことが、保育士に求められる専門性なのです。
だからこの記事でも、「この言葉が絶対に正解」とはお伝えしません。
年齢や発達、子どもの性格、場面によって関わり方は変わります。
年齢によって言葉掛けは変わる
子どもへの言葉掛けには、「これが正解」という決まった言葉はありません。
なぜなら、0歳と5歳では発達段階が大きく異なり、同じ言葉でも受け取り方が変わるからです。
大切なのは、その年齢でどのような力が育っているのかを理解し、一人ひとりの姿に合わせて言葉を選ぶことです。
ここでは、保育現場でよくある場面を例に、年齢別の関わり方をご紹介します。
0歳児|安心感を育てる言葉掛け
0歳児は、まだ言葉の意味を十分理解しているわけではありません。
しかし、大人の表情や声のトーン、抱っこの仕方などから、「安心できる人かどうか」を敏感に感じ取っています。
そのため、この時期の言葉掛けで一番大切なのは、「何を話すか」ではなく、「安心できる存在であること」です。
例えば、初めて保育園へ登園し、不安で泣いている子どもがいます。
無理に泣き止ませようとして、
「大丈夫、大丈夫。」
と何度も言うよりも、
「ママとバイバイして寂しかったね。」
「先生と一緒に過ごそうね。」
と、今の気持ちを代弁してあげる方が、安心につながることがあります。
子どもは、自分の気持ちを分かってもらえたと感じることで、少しずつ安心していきます。
園長のワンポイント
泣き止ませることを目的にしないこと。
まずは安心できる存在になることが、0歳児との信頼関係づくりの第一歩です。
1歳児|「やってみたい」を受け止める
1歳頃になると、「自分でやりたい」という気持ちが少しずつ芽生えてきます。
スプーンを持ちたがる。
靴を履こうとする。
階段を自分で上りたがる。
大人から見ると時間がかかり、つい手伝いたくなる場面ばかりです。
しかし、この「やってみたい」という気持ちは、自立への大切な第一歩です。
例えば、靴を履こうとして何度も失敗している子どもがいたとします。
NGな言葉掛け
「先生がやってあげるね。」
おすすめの言葉掛け
「自分でやってみたいんだね。」
「あと少しだね。」
「先生はここだけ持つね。」
全部やってしまうのではなく、子どもができる部分を残すことが大切です。
「できた」という成功体験は、次の挑戦につながります。
2歳児|イヤイヤ期は心が育っている証拠
2歳児は、自分の気持ちがはっきりしてくる時期です。
だからこそ、
「イヤ!」
「自分で!」
という言葉が増えていきます。
この姿を困った行動として見るのではなく、「自分の意思を持ち始めた成長の姿」と捉えることが大切です。
例えば、お片付けの時間になっても遊び続けている子ども。
NGな言葉掛け
「早く片付けて。」
「もう終わり!」
おすすめの言葉掛け
「まだ遊びたかったんだね。」
「この車が大好きだったんだね。」
「最後に一緒に駐車場へ戻してあげようか。」
気持ちを受け止めてもらえた子どもは、安心して次の行動へ移りやすくなります。
【園長経験から】
私は新人職員へ、
「子どもの行動だけを見ないで、その行動の理由を考えてみよう。」
と伝えていました。
片付けない子どもではなく、「まだ遊びたかった子」。
泣いている子どもではなく、「悲しかった子」。
その視点が変わるだけで、自然と言葉掛けも変わっていきます。
3歳児|「どう思う?」が考える力を育てる
3歳頃になると、言葉で自分の思いを伝えられるようになり、友達との関わりも増えてきます。
この時期からは、保育者が答えを教えるのではなく、一緒に考える関わりが大切になります。
例えば、積み木が崩れてしまい、悔しそうにしている子ども。
NGな言葉掛け
「こうやれば倒れないよ。」
おすすめの言葉掛け
「どうして倒れちゃったんだろう?」
「次はどうしたらいいと思う?」
「先生も一緒に考えてみようか。」
すると子どもは、
「大きいのを下にする!」
「もっとゆっくり置く!」
など、自分なりの答えを見つけ始めます。
この「自分で考えた経験」が、主体性や思考力を育てていきます。
4歳児|結果より「過程」を認める
4歳頃になると、できることが増え、周りの友達と比べる姿も見られるようになります。
だからこそ、「できた」「できない」だけではなく、その子がどのように取り組んだかを見てあげることが大切です。
例えば、製作活動で思うように作品が完成しなかった子ども。
NGな言葉掛け
「惜しかったね。」
「次は頑張ろう。」
おすすめの言葉掛け
「最後まであきらめずに作ったね。」
「色をたくさん考えながら選んでいたね。」
「先生、その工夫がすてきだと思ったよ。」
結果だけではなく、努力や工夫を認めてもらうことで、「また挑戦したい」という気持ちにつながります。
5歳児|答えを教えるより、一緒に考える
5歳になると、小学校への期待が高まる時期です。
しかし、小学校に向けて必要なのは、知識を増やすことだけではありません。
自分で考え、人と話し合い、答えを見つけていく経験が何より大切です。
例えば、友達同士でトラブルになった場面。
NGな言葉掛け
「仲良くしなさい。」
「謝りなさい。」
おすすめの言葉掛け
「○○さんは、どんな気持ちだったと思う?」
「あなたはどうしたかったの?」
「次はどうしたら、お互いに気持ちよく遊べそうかな?」
大人が答えを決めるのではなく、子ども自身が考える機会をつくることで、相手を思いやる力や問題を解決する力が育っていきます。
年齢が違っても、共通して大切なこと
ここまで年齢別の言葉掛けをご紹介しましたが、どの年齢にも共通して大切なことがあります。
それは、「子どもの気持ちを受け止めてから言葉を掛ける」ということです。
子どもは、自分の気持ちを理解してもらえたと感じた時、初めて相手の言葉を受け入れる準備ができます。
反対に、気持ちを無視されたまま指示だけが続くと、「怒られた」「否定された」という印象だけが残ってしまうこともあります。
子どもを変えようとして言葉を掛けるのではなく、まずはその子の心に寄り添うこと。
その積み重ねが、信頼関係を育み、自分で考え、自分で行動できる子どもの成長につながっていくのです。
保育士がつい使ってしまう言葉掛けと、子どもの心を育てる伝え方
保育の現場は毎日忙しく、子どもたちも一人ひとり違います。
だからこそ、つい口にしてしまう言葉があります。
もちろん、保育士も人間です。余裕がなくなる日もありますし、時間に追われることもあります。
大切なのは、「この言葉は使ってはいけない」と自分を責めることではありません。
その言葉が子どもにどのように伝わるのかを知り、少しずつ言葉を変えていくことです。
ほんの少し表現を変えるだけで、子どもの表情や行動は驚くほど変わることがあります。
「早くして!」
保育室で最も多く聞かれる言葉の一つではないでしょうか。
朝の支度、散歩の準備、給食、帰りの支度…。
時間との勝負になる保育では、つい口から出てしまいます。
しかし、子どもにとって「早く」という言葉は、とても曖昧です。
「何を」「どれくらい」「どうすれば」早いのかが分からないため、言われても行動につながらないことがあります。
例えば、お片付けの時間になっても夢中で遊んでいる子どもがいたとします。
保育者が、
「早く片付けて!」
と声を掛けても、子どもは遊び続けます。
さらに、
「何回言えば分かるの?」
と言われても、子どもは困ってしまいます。
実は、子どもは話を聞いていないのではありません。
遊びから次の活動へ気持ちを切り替えることが難しいだけなのです。
そんな時は、
「あと3分でお片付けを始めるよ。」
「車さんをお家に戻してあげよう。」
「先生とどっちが先に靴を履けるかな。」
このように、次に何をするのかを具体的に伝えたり、遊びの延長として声を掛けたりすることで、子どもは行動の見通しを持ちやすくなります。
「なんでできないの?」
子どもが何かに失敗した時、大人は思わず、
「なんでできないの?」
と聞いてしまうことがあります。
しかし、この問いに子どもは答えられません。
なぜなら、一番困っているのは子ども自身だからです。
例えば、給食の時間。
スプーンがうまく使えず、食べ物をこぼしてしまいました。
そこで、
「なんでできないの?」
と言われると、子どもは黙ってしまいます。
食べること自体が嫌になってしまうこともあります。
そんな場面では、
「難しかったね。」
「どこがやりにくかったかな。」
「先生も一緒にやってみようか。」
という言葉の方が、子どもは安心できます。
できなかったことを責めるのではなく、一緒に乗り越えようとする姿勢が伝わるからです。
園長経験から
私は新人保育士へ、
「理由を聞く前に、気持ちを聞いてみよう。」
とよく伝えていました。
できなかった理由よりも、
「悔しかった?」
「難しかった?」
その一言の方が、子どもの心は開きやすくなります。
「○○ちゃんはできているよ」
比較は、一時的には子どもを動かすことがあります。
しかし、その代わりに自己肯定感を傷つけてしまうこともあります。
例えば、
「○○ちゃんはもう座っているよ。」
と言われた子どもは、座るかもしれません。
でも、それは自分で納得したからではなく、「怒られたくない」という気持ちで動いているだけかもしれません。
また、「先生は自分ではなく、他の子を見ている」と感じる子どももいます。
そんな時は、
「○○くんが座ったら、みんなで絵本を読もう。」
「先生、○○くんと一緒に絵本を読みたいな。」
など、その子自身に目を向けた言葉を掛けてみましょう。
子どもは比較されることで伸びるのではなく、自分を認めてもらえることで成長していきます。
「すごいね!」だけで終わらせない
子どもが作品を持ってきたり、何かを見つけたりした時、
「すごいね!」
「上手だね!」
と伝えることはよくあります。
もちろん、その言葉が悪いわけではありません。
しかし、それだけで会話が終わってしまうのは少しもったいないと私は思います。
例えば、
子どもが積み木を高く積み上げて、
「先生、見て!」
と嬉しそうに呼んできました。
そこで、
「すごいね。」
だけで終わってしまえば、会話はそこで終わります。
でも、
「どこが一番難しかった?」
「どうやってこんなに高く積めたの?」
「先生にも教えてくれる?」
と聞いてみると、子どもは夢中になって話し始めます。
保育者が評価することよりも、子どもの考えや気持ちに興味を持つこと。
その積み重ねが、「もっと話したい」「もっと伝えたい」という気持ちを育てていきます。
「頑張って!」よりも、今の努力を認める
「頑張って!」
という言葉も、私たちがよく使う言葉です。
しかし、子どもはすでに十分頑張っていることが少なくありません。
例えば、縄跳びに挑戦している子ども。
何度も跳ぼうとしては失敗しています。
そんな時、
「頑張って!」
と言われると、
「もう頑張っているのに…。」
と感じる子どももいます。
そんな場面では、
「何回も挑戦しているね。」
「昨日より高く跳べるようになったね。」
「先生は、その頑張っている姿が嬉しいよ。」
というように、結果ではなく過程を認める言葉を掛けることで、子どもは「また挑戦してみよう」という気持ちになります。
自己肯定感は、「できた」という結果だけではなく、「頑張る姿を認めてもらえた」という経験からも育っていくのです。
【園長経験から】子どもは、大人の言葉を聞くだけではなく、真似をして育っている
園長として多くの保育を見てきました。
同じ年齢、同じ活動でも、保育者によってクラスの雰囲気が大きく違うことがあります。
その違いは、特別な保育技術ではありません。
毎日の何気ない言葉の積み重ねです。
子どもの話を最後まで聞く先生のクラスでは、子ども同士も友達の話をよく聞くようになります。
「ありがとう」をたくさん伝える先生のクラスでは、子ども同士でも自然と「ありがとう」が増えていきます。
反対に、指示や注意ばかりの保育では、子ども同士の会話も命令口調になってしまう場面を何度も見てきました。
子どもは、大人の言葉を聞いて育つだけではありません。
大人の姿を見て、人との関わり方そのものを学んでいます。
だからこそ、保育士が日々どのような言葉を選ぶかは、子どもたちの未来の人間関係にもつながっていくのです。
大切なのは「上手に話すこと」ではなく、「子どもを理解しようとすること」
ここまでさまざまな言葉掛けをご紹介してきました。
すると、
「こんなに考えながら話さなければいけないの?」
と思われる方もいるかもしれません。
でも、安心してください。
保育に必要なのは、話し上手になることではありません。
一番大切なのは、
「この子は今、どんな気持ちなのだろう。」
と考えることです。
その気持ちがあれば、自然と言葉は変わっていきます。
子どもが求めているのは、完璧な言葉ではありません。
**「自分のことを分かろうとしてくれる先生」**です。
その思いが伝わる言葉こそが、子どもの安心感や自己肯定感、そして人を信頼する力を育てていくのです。
言葉よりも大切なもの。それは「あなたを見ているよ」という安心感
ここまで、年齢別の言葉掛けや、保育現場でよくある場面をもとに関わり方をご紹介してきました。
しかし、最後に一つだけお伝えしたいことがあります。
それは、どんな言葉を掛けるか以上に大切なことがあるということです。
それは、子どもに
「先生は自分のことを見てくれている。」
と感じてもらうことです。
どれほど素敵な言葉を掛けても、子どもの気持ちを見ずに機械的に話していては、その言葉は心に届きません。
反対に、短い一言だったとしても、子どもの目を見て、気持ちに寄り添いながら伝えた言葉は、子どもの心に残ります。
保育士の仕事は、言葉を教えることではありません。
子ども一人ひとりの思いを受け止め、「あなたは大切な存在だよ」というメッセージを日々伝え続ける仕事なのだと思います。
【園長経験から】子どもの「見て!」を大切にしてほしい
私は園長として職員へ話すだけでなく、一人の父親としても意識していることがあります。
それは、子どもから
「見て!」
と言われた時は、できる限り手を止めて見ることです。
もちろん、保育現場は忙しく、家庭でも家事や仕事があります。
いつでも応えられるわけではありません。
それでも、子どもが何かを発見した時や、一生懸命に取り組んでいる時は、その瞬間だけでも子どもの世界に入り込むようにしています。
「何を見つけたの?」
「どうしてそう思ったの?」
「先生にも教えて。」
そうやって子どもの話に耳を傾けると、本当に嬉しそうな表情を見せてくれます。
子どもは「褒めてほしい」だけではありません。
自分が見ている世界を、大好きな大人と共有したいのです。
その積み重ねが、「自分は大切にされている」という安心感につながっていきます。
子どもの一瞬の気づきは、一生の財産になる
私は保育の中で、子どもの小さな発見をとても大切にしています。
散歩中に見つけた小さな虫。
空に浮かぶ雲。
水たまりに映る景色。
友達との何気ない会話。
大人から見れば、ほんの些細な出来事かもしれません。
しかし、子どもにとっては、その瞬間が新しい世界との出会いであり、心が大きく動く瞬間です。
その時に、
「あとでね。」
「今は忙しいから。」
と何度も流されてしまうと、「伝えたい」という気持ちは少しずつ小さくなってしまうかもしれません。
反対に、
「本当だね。」
「先生も初めて気付いたよ。」
「一緒に見てみよう。」
そんな言葉を掛けてもらえた子どもは、「また伝えたい」「もっと知りたい」という気持ちを育んでいきます。
私は、このような一瞬の積み重ねこそが、生涯にわたって学び続ける力や、主体的に考える力につながると考えています。
子どもの一瞬の気づきは、その子にとって一生の財産になるかもしれません。
だからこそ、その瞬間を大切にできる保育者でありたいと思っています。
保育士も、保護者も、完璧である必要はありません
この記事を読んで、
「もっと良い言葉を掛けなければ。」
と思われた方もいるかもしれません。
でも、保育士も保護者も人間です。
忙しい日もあります。
余裕がなくなる日もあります。
思わず強い口調になってしまうこともあるでしょう。
それでも大丈夫です。
大切なのは、毎日完璧でいることではありません。
子どもを理解しようとする気持ちを持ち続けることです。
もし、今日うまく関われなかったとしても、明日また笑顔で向き合えばいい。
子どもは、その積み重ねの中で、大人との信頼関係を築いていきます。
まとめ|子どもの心を育てるのは、毎日の小さな言葉の積み重ね
保育士の言葉掛けには、子どもの行動を変える力があります。
しかし、それ以上に、子どもの心を育てる力があります。
だからこそ、
「早くして。」
「なんでできないの。」
という言葉を減らし、
「どうしたの?」
「一緒に考えてみよう。」
「先生は見ているよ。」
そんな言葉を少しずつ増やしていけたら、子どもたちは安心して挑戦できるようになります。
保育は、特別な教材や技術だけで成り立つものではありません。
子どもの気持ちに寄り添い、一人ひとりの姿を認めながら関わること。
その積み重ねが、自己肯定感や主体性、人を思いやる心を育て、子どもたちがこれから先の人生を自分らしく歩んでいくための土台になっていきます。
子どもたちと濃密な時間を過ごせる期間は、人生全体で見れば決して長くありません。
だからこそ、そのかけがえのない時間を大切にしながら、一人ひとりの「見て」「聞いて」「伝えたい」という気持ちに、これからも丁寧に応えていきたいですね。
この記事のまとめ
- 言葉掛けに「正解」はないが、子どもの気持ちに寄り添う姿勢が何より大切
- 年齢や発達に応じて、言葉の選び方や関わり方を変えることが重要
- 結果よりも、努力や工夫、挑戦する過程を認めることで自己肯定感は育つ
- 「見て!」という子どものサインは、信頼の証。できる限り立ち止まり、一緒に喜びや発見を共有したい
- 子どもの一瞬の気づきや感動は、その子の未来につながる大切な経験になる


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