保育における人的環境とは?|子ども主体の保育を支える「人」の力を考える

保育内容
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「保育環境を整えましょう」

保育の現場では、よく聞く言葉です。

玩具を準備する。

絵本を置く。

子どもが遊びやすい空間をつくる。

安全に過ごせるように環境を整える。

こうした「物的環境」は、保育を考えるうえで欠かせません。

しかし、保育園において、もう一つ忘れてはいけない環境があります。

それが、

人的環境です。

保育園にいる大人の存在そのものが、子どもにとって大きな環境になります。

今回は、子ども主体の保育や保育の質を考えるうえで欠かせない「人的環境」について考えてみたいと思います。

人的環境とは何か

人的環境とは、簡単に言えば、

子どもの周りにいる人との関係や、その人たちがつくり出す環境

のことです。

保育園で考えてみれば、

保育士。

主任。

園長。

看護師。

栄養士。

調理員。

保育補助者。

その他、園で子どもと関わる職員。

こうした人たちが、子どもを取り巻く人的環境になります。

そして大切なのは、「何人いるか」だけではありません。

どのような関わりをするのか。

職員同士がどのような関係を築いているのか。

子どものことを共有できているのか。

困ったときに相談できるのか。

こうしたことも、人的環境の一部です。

「人数」だけが人的環境ではない

例えば、

「保育士が2人いる」

というだけでは、良い人的環境とは言い切れません。

2人の保育士が、

「私はこの子を見ます」

「私は全体を見ます」

と役割を分担できている。

子どもの姿を共有している。

互いに声をかけ合える。

必要なときにはすぐに助けを求められる。

そうした環境であれば、子どもにとっても安心できる保育環境につながります。

反対に、

保育士が複数いても、

「自分の担当だけを見る」

「困っていても相談できない」

「職員同士で考え方が違う」

という状態であれば、人数だけでは解決できない問題が生まれます。

だからこそ、人的環境を考えるときには、

「何人いるか」だけではなく、「どのような人が、どのようにつながっているか」

を見る必要があります。

配置基準は大切。でも、それだけでは保育の質は決まらない

保育所には、年齢ごとに職員配置の基準があります。

現在は、3歳児15人につき1人、4・5歳児25人につき1人という基準へ改善されています。

これは、保育の安全や質を支えるために必要な最低限の基準です。

そして、国も現在、配置基準の改善を進めています。

しかし、

「配置基準を満たしている=人的環境が十分」

とは限りません。

例えば、同じ3歳児15人でも、

子どもたちが落ち着いて遊んでいる日と、

トラブルが続いている日では、保育者が感じる負担はまったく違います。

個別に配慮が必要な子どもがいる場合もあります。

生活の中で、一人ひとりの思いを受け止める必要もあります。

だからこそ、

「人数として基準を満たしているか」

と、

「子ども一人ひとりに丁寧に関われる環境になっているか」

は、別の視点から考える必要があります。

子ども主体の保育には「余白」が必要

私は、子ども主体の保育を考えるとき、

「余白」

という言葉が大切だと思っています。

子どもが、

「これやりたい」

と言ったとき。

「どうして?」

と話を聞く余白。

子ども同士のトラブルが起きたとき。

すぐに「やめなさい」と止めるのではなく、子どもたちの姿を見る余白。

一人の子どもが困っているとき。

少し立ち止まって、その子の気持ちを考える余白。

こうした余白があることで、保育者は子どもをよく見ることができます。

反対に、常に時間に追われ、目の前のことを処理するだけになってしまうと、

「早くして」

「次はこれ」

「みんな一緒に」

という保育になりやすくなります。

もちろん、集団生活では一定の進行も必要です。

しかし、余白のない保育が続けば、子どもの主体性を尊重することは難しくなります。

保育者自身も人的環境の一部

そして、忘れてはいけないのが、

保育者自身も子どもにとっての環境である

ということです。

保育者の表情。

声の大きさ。

言葉遣い。

子どもを見る視線。

子どもへの関わり方。

それらは、子どもに伝わります。

忙しそうにしている保育者を見て、子どもが遠慮してしまうこともあるかもしれません。

逆に、保育者が安心して子どもと向き合っていると、子どもも安心して自分の思いを表現できるかもしれません。

だからこそ、保育者が安心して働ける環境をつくることは、そのまま子どものための環境づくりにもつながります。

保育者同士の関係も子どもに影響する

人的環境を考えるとき、子どもと保育者の関係だけを見てはいけません。

保育者同士の関係も大切です。

例えば、

「この子は今、こういう姿があります」

「昨日はこんなことがありました」

「今日は少し疲れているようです」

と、職員同士が情報を共有できている園。

一方で、

「その子のことは担任しか知らない」

「相談しづらい」

「困っていても言えない」

という園。

どちらが子どもにとって安心できる環境かは、言うまでもありません。

チームとして子どもを見ることができる園では、一人の保育者が抱え込む必要も少なくなります。

「一人で抱えない」ことも人的環境

保育は、一人で完結する仕事ではありません。

だからこそ、

「ちょっと相談していいですか?」

と言える環境が必要です。

「この子への関わり方、どう思いますか?」

と聞ける環境。

「今日は少し大変なので、見てもらえますか?」

と言える環境。

「自分の保育について意見を聞きたい」

と言える環境。

これがあるだけでも、保育者の心理的な負担は変わります。

そして、相談された側も、

「そんなこともできないの?」

と否定するのではなく、

「一緒に考えよう」

と受け止める。

こうした関係性そのものが、人的環境なのだと思います。

【内部リンク:「一人で抱え込んでいない?保育士もインクルーシブで考える、チームで支える保育」】

人的環境を整えるのは園長・主任の仕事でもある

人的環境は、自然に良くなるものではありません。

園長や主任が、

職員同士が話しやすい場をつくる。

情報共有の方法を整える。

役割を明確にする。

必要なときにはフォローに入る。

職員の悩みを聞く。

保育について対話する機会をつくる。

こうした働きかけによって、少しずつつくられていきます。

だからこそ、園長・主任には「人を配置する」だけではなく、

「人が力を発揮できる環境をつくる」

という役割があります。

「人がいればいい」でもない

ここも重要です。

人的環境を考えると、

「じゃあ、とにかく人を増やせばいい」

と思うかもしれません。

もちろん、人員の確保は非常に重要です。

しかし、人数だけ増やせばすべて解決するわけではありません。

職員同士が連携できること。

保育の方向性が共有されていること。

役割が明確であること。

相談できること。

それぞれの職員が専門性を発揮できること。

こうしたことが組み合わさって、初めて「人的環境」が機能します。

保育補助者など「幅広い人材」の力をどう生かすか

現在、保育現場では保育士だけでなく、保育補助者などを含めた幅広い人材の活用も進められています。

ここで大切なのは、

「資格がない人に保育士と同じ仕事を任せる」

ということではありません。

それぞれの専門性や役割を整理し、

保育士が保育士として専門性を発揮できるように支える

という考え方が必要です。

例えば、環境整備や準備、片付け、子どもの遊びの見守りなど、園の状況に応じて補助者の力を生かすことで、保育士が子ども一人ひとりを見る時間を確保できる場合があります。

「人を増やす」ことだけではなく、

「どの人が、どの役割を担えば、子どもにとってより良い環境になるのか」

と考えることが大切です。

人的環境は「子どものため」であり「保育者のため」でもある

人的環境を整えることは、保育者を楽にするためだけではありません。

もちろん、保育者が働きやすくなることは大切です。

しかし、最終的にはそれが子どもに返ってきます。

保育者に余裕がある。

子どもをよく見ることができる。

子どもの思いに気づくことができる。

必要なときに応答できる。

子どもが安心して過ごせる。

この循環をつくることが、人的環境を整える意味なのだと思います。

「子ども主体」を実現するために、人を考える

子ども主体の保育について考えるとき、

「保育者の関わり方」

だけを考えてしまうことがあります。

もちろん、それも大切です。

しかし、その保育者がどのような環境で働いているのかも考えなければなりません。

一人で抱え込んでいないか。

相談できるか。

必要なときに助けてもらえるか。

子どもの情報を共有できているか。

園として保育の方向性が揃っているか。

そして、必要な人員を確保できているか。

こうした視点を含めて、初めて「子ども主体の保育」を考えることができます。

人的環境を整えることは、保育の質を高めること

保育の質を高めるというと、

「もっと良い活動をしよう」

「新しい保育方法を取り入れよう」

と考えることがあります。

しかし、その前に、

「今、子どもの周りにいる大人は、安心して子どもと向き合えているだろうか」

と考えてみることも大切です。

子ども主体の保育。

保育の質。

職員の専門性。

保護者との信頼関係。

これらは別々のものではありません。

すべて、人と人との関係の中でつながっています。

だからこそ、私は「人的環境」という視点を、これからの保育でさらに大切にしていきたいと思っています。

子どもを変えようとする前に、環境を見直す。

保育者を責める前に、保育者を取り巻く環境を考える。

「もっと頑張って」と言う前に、「どうすれば力を発揮できるだろう」と考える。

そして、子どもにとってより良い保育を、職員みんなで考える。

それが、子ども主体の保育を支える人的環境づくりにつながっていくのではないでしょうか。

【内部リンク:「子ども主体の保育」と人員配置の難しさ

【内部リンク:今求められている「保育の質」とは?

【内部リンク:保育に正解はないは本当か?

【内部リンク:園内研修の進め方とは?

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