はじめに
保護者対応において、誰もが少なからず挫折したり、壁にぶつかったりする経験があるのではないだろうか。
私自身も主任時代に、全く身に覚えがないにも関わらず、毎日挨拶をしても目を合わせてもらえず、無視され続けた保護者様がいた。
- 挨拶は丁寧にしていた。
- 保護者間で対応に差が出ないよう意識していた。
- お子様との関係も良好だった。
それでも関係がうまくいかないことはある。
もしかすると何か癇に障ることがあったのかもしれない。
生理的に合わなかったのかもしれない。
こうしたケースは、どれだけ努力しても起こり得る。
しかし今回お伝えしたいのは、そのような相性の問題ではない。
保護者対応で私たち保育者が陥りやすい「正しさの押し付け」の危険性についてである。
「先生」と呼ばれることによる落とし穴
保育士や幼稚園教諭は、日常的に「先生」と呼ばれる。
もちろんそれは職業上の呼称であり、偉いという意味ではない。
しかし長年その環境にいると、無意識のうちに
「自分の方が知っている」
「自分の方が正しい」
という感覚が生まれてしまうことがある。
保育の専門知識や経験は確かに大切だ。
しかし、その専門性が
「だから私の言うことが正しい」
に変わってしまった時、保護者との関係は少しずつ崩れ始める。
保護者は何を求めて質問しているのか
以前、行事の開始時間について保護者から質問を受けた際のことである。
対応した職員は、うろ覚えの情報でありながら返答をしてしまった。
もちろん、何とか答えようとしてくれた気持ちはありがたい。
しかし、その保護者様が本当に求めていたものは何だったのだろうか。
- 急いで知りたかったのか。
- それとも確実な情報が知りたかったのか。
行事の予定という性質を考えれば、後者である可能性が高い。
その場合、
「確認して明日お伝えします」
と答える方が、よほど誠実で信頼できる対応だったのではないだろうか。
保護者対応において大切なのは、すぐに答えることではない。
相手が何を求めているのかを考えることである。
子育て相談にも同じことが言える
これは子どもの成長についての相談でも同様である。
例えば保護者から、
「何をするにもイヤだと言うんです。園ではどうしていますか?」
と相談されたとする。いわゆるイヤイヤ期だ。
この時、保護者は本当に答えだけを求めているのだろうか。
もしかすると、
「同じような姿は園でもありますか?」
「私の育て方が悪いのでしょうか?」
「少し話を聞いてほしい」
そんな気持ちが隠れているかもしれない。
しかしここで、
「イヤと言うなら全部自分でやらせましょう」
「待つことが一番です」
と断言してしまう。
内容自体は間違いではないかもしれない。
しかし、その保護者に合う方法なのかは分からない。
ましてや、その言葉だけで悩みが解決するわけでもない。
保護者対応でやってはいけないタブー
私は保護者対応で避けるべきことの一つに
「言い切り」
があると考えている。
子育てに絶対の正解はない。
家庭環境も違う。
子どもの性格も違う。
保護者の価値観も違う。
だからこそ、
「こうしてください」
「これが正解です」
「大丈夫です」
と断定することには慎重であるべきだ。
本当に求められている専門性とは
保護者が何を求めて質問しているのか。
その本質を汲み取ることは簡単ではない。
むしろ非常に難しい。
しかし、その難しい部分こそが保育者の専門性なのではないだろうか。
知識を伝えることだけが専門性ではない。
目の前の保護者が何に悩み、何を求めているのかを理解しようとする姿勢。
その積み重ねが、信頼関係につながる。
まとめ
保護者対応で最も危険なのは、知識不足ではない。
自分の正しさを押し付けてしまうことである。
保護者が求めているものは、必ずしも正解とは限らない。
安心したいのかもしれない。
話を聞いてほしいのかもしれない。
一緒に考えてほしいのかもしれない。
だからこそ、押し付けるのではなく、まず理解しようとする。
その姿勢こそが、丁寧で誠実な保護者対応につながるのではないだろうか。

コメント