保育園で大切にされている活動の一つに「食育」があります。
食事は、子どもの体を作るだけではありません。
食べる楽しさを知ること。
食材に興味を持つこと。
友だちや保育者と一緒に食卓を囲むこと。
食事を通して、子どもは多くのことを学んでいます。
しかし、保育現場では長年、
「残さず食べること」
「完食すること」
が大切にされてきた一面があります。
もちろん、食べ物を大切にする気持ちや、作ってくれた人への感謝を育てることは大切です。
一方で、私たちは今一度考える必要があります。
完食することそのものが、子どもの食育の目的になっていないでしょうか。
食育の目的は「完食」ではなく、食べる力を育てること
子どもには、一人一人違いがあります。
食べられる量。
好き嫌い。
食感への感じ方。
食への興味。
体調。
発達段階。
同じ年齢の子どもでも、食事に対する姿は大きく異なります。
その中で大切なのは、
「全員が同じ量を食べること」
ではありません。
子ども自身が、
「食べてみたい」
「おいしい」
「もう少し食べられそう」
「今日はこれくらいにしたい」
と、自分の感覚を大切にしながら食事と向き合う経験です。
「食べなさい」という関わりが与える影響
保育者は、子どもに食べてほしいと思います。
栄養を取ってほしい。
丈夫な体になってほしい。
食べ物を大切にしてほしい。
その思いは、決して間違いではありません。
しかし、大人の願いが強くなりすぎると、
「全部食べるまで終われない」
「苦手でも絶対食べる」
「食べられないことを注意される」
という関わりにつながることがあります。
子どもにとって食事の時間が、
「楽しい時間」
ではなく、
「怒られないように頑張る時間」
になってしまう可能性があります。
食べることへの苦手意識や不安につながることもあります。
子どもの気持ちを尊重することと、食育を諦めることは違う
「無理に食べさせない」
という考え方を聞くと、
「好き嫌いをそのまま認めるだけなのでは?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、子どもの気持ちを尊重することは、何でも許すことではありません。
保育者には、
「食べてみようかな」
と思える環境を作る役割があります。
例えば、
・食材について話す
・料理に興味を持つ経験を作る
・少量から挑戦できるようにする
・食べられた経験を認める
・友だちと楽しく食卓を囲む
こうした関わりによって、子どもの「食べてみたい」という気持ちを育てていきます。
子どもの主体性を大切にした食育へ
保育所保育指針では、子どもの主体性を尊重し、一人一人の発達過程に応じた保育を行うことが求められています。
食事も同じです。
大人が決めたゴールに子どもを合わせるのではなく、
「この子にとって、今必要な経験は何か」
を考えることが大切です。
完食できたことだけを見るのではなく、
昨日より少し挑戦できたこと。
苦手だったものに興味を持ったこと。
友だちと楽しく食べられたこと。
そこにも大切な成長があります。
保育者として問い直したいこと
私たちは、子どもに食べてほしいという思いから、知らず知らずのうちに大人の基準を押し付けていないでしょうか。
「全部食べることが良い」
「残すことは悪い」
という一つの価値観だけで、子どもの姿を見ていないでしょうか。
大切なのは、完食という結果だけではありません。
食べることを楽しむ心。
食に興味を持つ気持ち。
自分の体と向き合う力。
それらを育てることが、本当の意味での食育なのではないでしょうか。
保育の質を高めるためには、当たり前だと思っている関わりを一度見直すことが必要です。
「なぜ、この関わりをしているのか」
その問いを持ち続けることが、専門職としての成長につながります。


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